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どれみふぁワンダーランド 2011年1月22日 O.A.
 2009年に放送開始した公共放送の音楽バラエティ番組。 宮川彬良さん、戸田恵子さん、RAG FAIRをレギュラーに据えて、音楽ジャンルに拘らず幅広いテーマで音楽の新しい楽しみ方を提案する本格的な内容の番組でした。 番組内コーナー「音楽の深読み アナログ万歳 III」では冒頭から白いメロトロンM400Sの鍵盤が大写しになりRAG FAIRの引地洋輔さんがメロトロンフルートを弾いた後メンバー揃ってハモりながらタイトルコール。 以下、番組文字起こし。

宮川彬良「実はさっき洋輔くんが何気なく弾いていたキーボード。 彼は気づいていたんでしょうかねぇ、実はコレ日本ではほとんどお目にかかれない世界でも3,000台しかないと言われる超プレミアもののアナログキーボード、その名もメロトローン!(BGM:メロトロンフルートのファンファーレ)だったんであります。 この35鍵の鍵盤の向こうに35台のテープレコーダーが並んでいると思ってください。 ドの音を弾くとドのテープレコーダーが回るんです。(実際に鍵盤を押す) で、レの音を弾くとそのお隣のレを録音したテープレコーダーが回る(実際に鍵盤を押す)という仕組みです。 バイオリン、フルート、人の声など、あらかじめ録音してあればどんな音でも出せるのです 」
 ビートルズ「ストローベリー・フィールズ・フォーエバー」のイントロを演奏してして「ほらねーっ! まぁ、早い話、このメロトロン1台の中には35台のラジカセが並んでいる(BGM:メロトロンフルートとメロトロンストリングスによるファンファーレ)というような物なのです。 それが証拠に、テープですからね、鍵盤を離す瞬間に今度は巻き戻しをする音が聞こえるんですよぉ、シュルシュルッとね〜」 フルート音の鍵盤をしばらく押してから離し、テープが巻き戻る音をマイクで拾い「ほらねーーっ!! アナログさんにはほんとご苦労さん!」
 「さあ、当番組の人気シリーズ、アナログ万歳、このキーボードだって相当な前世の遺物をご紹介してたんですが、ノン、ノン、ノン、ノン、ノー、こんなもんじゃあないんです。 ここはNHK東京放送センターですよぉ! もう、こう言った財産は死ぬほどあるんです。いわゆる大昔の最先端、いやぁもうアナログマニアにはたまりませんねぇ。 ちょっと涙が出てきております。 それでは早速VTRどうぞ!」

 NHKが誇る 超アナログの世界へご案内しましょう♪...とテロップが出て、宮川彬良さんはNHK内各所を移動して、鉄板エコー(昭和39年頃から使用)、エコールーム(当時のNHK放送センターには3部屋存在)、音響効果部屋(フォーリー・ステージ)を紹介。 そして番組内で紹介されたメロトロンを含むアナログ機材でセッティングされたスタジオで、RAGFAIRとセッション。 曲は「走る!」作詞:宮川彬良/引地洋輔(RAG FAIR) 作曲:宮川彬良 コミカルな歌詞のアップテンポなナンバーに合いの手を入れるメロトロンのフルートとストリングスですが、演奏する手元が大写しになりここでは現行型のメロトロン マークVIが使用されていることが確認できました。 コーナー冒頭の試奏だけでも音程がかなり際どい雰囲気でしたので差し替えられたのかもしれません。 そして演奏終了とともにコーナーも終了。

 番組を進行する音楽家の宮川彬良さんはもちろん音楽家 宮川泰さんの息子さん。 宮川泰さんと言えばザ・ピーナッツの育ての親としても有名で、1974年のシングル「愛のゆくえ」では素晴らしいメロトロンを披露しています。 もしかしたらご自宅にもメロトロンがあって宮川彬良さんは子供の頃から親しんでいたのではと想像させるほどの痛快な入れ込み具合でした。
 また「あらかじめ」録音されたテープがあればメロトロンはどんな音でも出すことができると解説し、暗にサンプリング録音できるサンプラーではないことを伝えたり、実際に35台のラジカセを並べて見せるなどメロトロンの実態を正確に紹介する丁寧な姿勢が印象的でした。(世界でに3,000台云々は少々眉唾ですが) そして気になるところですが、スタジオに持ち込まれたこのメロトロンM400Sが放送局所有の楽器だったのか又は借り物だったのかは分からずじまい...更にはセッションで使用されたメロトロン マークVIはもしかして宮川彬良さんの自前だったりするのでしょうか?

(画像左/RAG FAIRの引地洋輔さんが白いメロトロンM400Sを試奏
(画像左から2番目/全国放送で大々的に紹介されるメロトロンM400S
(画像左から3番目/テープの巻き戻し音の原理を紹介し実演する宮川彬良さん
(画像右から3番目中/スタジオいっぱいに35台のラジカセを並べてメロトロンを紹介する宮川彬良さん
(画像右から2番目/白いグランドピアノの左側にメロトロンを配したセッションスタジオ
(画像右/実際の演奏は現行型メロトロン マークVIが使用された

2022年6月19日
テレビ東京 開運!なんでも鑑定団 2020年9月15日 O.A.
 2020年9月14日、SNS上に「明日のなんでも鑑定団はビートルズゆかりのキーボードが鑑定される、しかも鑑定士はFiveGの人らしい」との情報が流れてきました。 ビートルズ関連のお宝楽器といえばギター、ベース、ドラムというのが世間の一般論。 まあせいぜいHoner Pianet N程度で、メロトロンましてやビートルズが使用したMellotron Mark IIが登場する事などありえないと思って臨んだ翌日のオンエアでした。 9月15日 20時54分の放送開始から程なくして、今夜のゲストは劇団WAHAHA本舗の主宰 喰始さんと紹介。 あれ? これはなんか(良い意味で)まずいな...と冷や汗が出た瞬間、紫色のベールを纏った今夜のお宝が映し出された。 アシスタントのテレビ東京アナウンサー片渕葵さんがそのベールを取るまでもなく、そのこじんまりとした佇まいは間違いなく白いMellotron M400Sだとわかってしまった。 そして心の準備もできないまま全国のお茶の間へメロトロンの姿が晒されることとなりました(汗) 若い頃から谷啓さんの大ファンで交流のあった喰始さんが、谷啓さんの息子さんから遺品整理として譲り受けたのだそうです。 一部のメロトロンマニアの中で常々話題になっていた「亡くなった谷啓さんのメロトロンは今どこにあるのか?」と言う疑問は、テレビの地上波放送で大々的に回答が示されたのでした。 そしてTHE MOPSのラストアルバム「EXIT」に収録された、10分半を超えるメロトロンロックの名曲「わらの言葉」を作詞したのは喰始さんであったことが瞬時に頭の中で連結されました。 以下、番組文字起こし。

今田耕司「さあ、それではお宝オープン! ええ、ピアノじゃない、オルガンでもない、なんですかコレ?」
喰始「これ、なんだかわかんないでしょ? メロトロンと言いましてシンセサイザーって言うのが出る前の電子楽器みたいな...谷啓さんの息子さんから親父のいろんなものを整理したいんで、貰ってくれないかと」
福澤朗「遺品のような扱いですね」
喰「そうなんですね、その時に貰ったのがこのこう言う風なジャケット、これ谷啓さんの(ジャケット内ポケットのネーム刺繍を見せて)」
今田「これ、えーっ、谷って書いてある」
福澤「ああ、本当だ、すごい」
喰「だからちょっとここ(袖)短いんですけど」
福澤「あー、はっはっは」
今田「そう言うファッションかと思た!」
喰「(メロトロンは)当時ものすごい高いもので、ジョン・レノン、有名なジョン・レノンそう言う人しか持っていないような楽器だった」
福澤「これは今も音出るんですか?」
喰「...と思いますけど」
今田「出る??」
喰「扱ってないのでわかりません」
今田「僕、ちょっとね弾けるんですよ」
福澤「えへへ、弾けるんですか?」
今田「こんな短い(両手で35鍵盤の幅を示し)の初めてですよ」
喰「でも、弾くだけじゃなくて...」
今田「(よれたメロトロンフルート音源で演奏後)菊次郎の夏でございます」(スタジオ爆笑)
喰「音出したの初めてですよ、今田さんが」
今田「おおっ、これ谷啓さんも触ってたやつですよね多分」
福澤「すっごい!」
今田「たけしさんのピアノ触って、谷啓さんのこれ触って、すごいの弾いてるなあ」
福澤「すごい右手ですね」
今田「すごい右手ですね!」

場面転換し、ビートルズ「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」をBGM(ビートルズではなくこの番組のためにどなたかがが弾いているイントロ)に、ストロベリーフィールズ孤児院の赤い門が映し出される

ナレーター銀河万丈「この音色こそ時代を変えたのであった、(音楽スタジオに置かれた現行型メロトロン マークVIが画面に映され)メロトロンは1963年にイギリスで誕生した鍵盤楽器で、一見電子オルガンのように見えるが構造が全く違う 一番の特徴は鍵盤の下に磁気テープとそれを再生する機構が組み込まれていること」
今田「ははー、なんですかこれは」
銀河「この磁気テープには事前に楽器音などが録音されており(メロトロンの動作を模したアニメーションが映され)鍵盤がスイッチの役割を果たし、押し込むとテープが進み再生ヘッドを通過する事で音が出る 鍵盤を離すとテープはスプリングと滑車によって...」
今田「おぅえええ〜!???」
銀河「瞬時に巻き戻される これが一つ一つの鍵盤に対応し設置されているのである(テープが上下する映像) つまりメロトロンは音源を再生する鍵盤楽器」
今田「なるほど〜!」
銀河「現在のサンプリングマシンの先駆けであった 一つのテープには3種類の音が音階ごとに録音されており、トラックセレクターで音色を切り替えることができる 例えばこの音はフルート、セレクターをAからBに切り替えると3丁のバイオリン(3Violins)に変わる さらにセレクターをCにすると男女8人の混成コーラスとなる これ以外にもサックスやトロンボーンの管楽器や伴奏パターン、効果音などもあった」
今田「は〜〜〜〜〜っ(関心)」
銀河「そして3丁のバイオリンの音を選択し5つの鍵盤を同時に押すだけで15丁によるバイオリンの和音が演奏できるのである そんなメロトロンを世に広めたのがビートルズであった(ここでビートルズオリジナルのストロベリーイントロが流れる)」
今田、福澤、片渕葵「あっ!! 」
今田「これ」
片渕「知ってるよ」
福澤「そうなんだぁ」
銀河「ストロベリー・フィールズ・フォーエバーのイントロに流れる幻想的なフルートの音色こそメロトロンによるもので、この曲はポップスを芸術の域にまで昇華した名曲と言われている しかしメロトロンはとても繊細な楽器で電圧の変化による不安定さやテープの耐久性などメンテナンスや管理が大変だったため長期間のツアーに耐えられなかった さらに70年代中頃から和音を演奏できるポリフォニックシンセサイザー(ポリモーグが映される)が登場したことで徐々に姿を消して行った とは言え、現在でもaikoのカブトムシやいきものがかりの茜色の約束など、様々な楽曲で使われメロトロン独特の音色を好むミュージシャンは数多い 改めて依頼品を見てみよう 1970年に発売されたメロトロンM400Sで...破損しているのか音は出るもののかなり歪んでいる(出音の安定しないメロトロンフルートが映される) 果たして鑑定やいかに?」

FiveG鈴木清継氏による鑑定開始(例のBGM、てれれれれれれ〜♪)

今田「すごいもんでっせ」
福澤「ねー」
喰「いや〜、初めて知りましたっ、はっはっは〜」
今田「ねぇ」

鈴木氏がメロトロンフルートの音源でピッチコントロールを確認

今田「ご本人評価額になりますが」
喰「はい、100万でお願いします」
今田「参りましょう、オープン・ザ・プライス!」
電光掲示板が、550.000円の表示
今田「おおーーっ、ごじゅうごまーん」
福澤「100万には届きませんでしたが、これはいい値段ですよ」
鈴木「状態としてはいい物だと思います M400Sと言うモデルで一番成功を納めたものです 1,800台以上が作られています 日本では当時の定価が90万円から100万円位でした 中身を拝見しますとほとんどの部品がオリジナルの物が使われていますけれどもテープのコンディションがちょっと良くないですね キズがあったり巻き込んでしまってシワができたりとかテープのダメージがそのまま音質に出てしまう メロトロンはですねビートルズ以外でもプログレッシヴロックと言うジャンルがありまして、え、まあキングクリムゾン、ピンク・フロイドそう言ったバンドに重宝がられて良く使われた ただですね普及するにしたがってプロの演奏家の人達の仕事が奪われていったと言う...」
今田、福澤、片渕「はあぁ〜っ」
鈴木「BBCの番組でもよくこのメロトロンを使っていた時期があるんですね」
今田「はい」
鈴木「そこで問題になりまして」
今田「はい」
鈴木「契約していたミュージシャンの方々にお金を支払ったという...」
今田「へぇ〜っ」
片渕「ふぅ〜ん」
福澤「はー」
鈴木「そう言うエピソードもある面白い楽器です 持っている人がなかなか手放さない貴重な楽器に今なっています ちょっとは弾いて遊んであげてください♪」
喰「舞台でお笑いをやるそばでこう、音を出す」
福澤「梅垣さんあたりに弾きながら豆を(鼻から)吹いて欲しいなぁ」(会場爆笑) 以上、文字起こし終了。

 鑑定価格は55万円。 前所有者が谷啓さんであったということが鑑定価格には影響しなかったようですが、純然たる楽器の値段としては妥当なものと思いました。 放送中に映されたメロトロン内部の様子でシリアルナンバーは#726であることが確認できましたので、おそらく当時の日本正規代理店であった株式会社CMC(高級輸入車で有名な現在のコーンズ・アンド・カンパニー・リミテッド)が輸入した個体だと察します。(隣接するシリアルナンバーの個体を日本で良く見るという理由です) 筐体外観は経年変化でいい味のクリーム色になっており、まだらにタバコのヤニ汚れがついているように見受けられましたが、キズが少なく状態は悪くないと思われました。 鍵盤の歯並びも良くコントロールノブやスイッチも欠品なくオリジナル。 テープも35鍵盤揃っていてモーターコントロールカードは当時そのままのCMC-10が備わっていました。 ワンオーナーであり、あまり必要以上に弄られていない様子であったのも好印象です。 私の想像ですが、クリーニングとグリスアップ、そしてじっくりと調整することでまずは部品交換なく格段に状態が良くなるのではないかと思わせる個体でした。
 一つ残念なのは楽器の背面(電源コード側)が一切画面に映らなかったこと。 黒地に白抜きの「MELLOTRON」の大きなステッカーが貼ってあれば、もしかすると谷啓とザ・スーパーマーケット時代にTBS「笑って笑って60分」で使用していた個体と同一かもしれないと判断できたのです。 まあメロトロン界隈は非常に狭いのでいつか現物を見る機会があるような気がしています。 番組制作も大変丁寧で素晴らしい内容でした。 見逃してしまった方は再放送が待ち遠しいですね。

(画像左/お宝オープンの合図と共にテレビ東京アナウンサー片渕葵さんがベールを取る様子
(画像左から2番目/谷啓さんが所有していたメロトロン M400S #726
(画像中/恐る恐るメロトロンで「菊次郎の夏」を演奏する今田耕司さんと後ろで様子を見守る喰始さん
(画像右から2番目/楽器の歴史は現行型メロトロンMarkVIで解説
(画像右/まさかメロトロンの動作がわかるアニメーションがお茶の間で披露される時代が来るとは!

2020年9月19日
井上陽水 ドキュメント「氷の世界40年」
 2013年12月28日(土)21:00〜22:14、某公共放送にてオンエアされたドキュメンタリー番組。 73年12月1日に発売され、日本初のミリオンセラーアルバムとなった作品を、行方がわからなかった16トラックのマスターテープを聴きながら関係者が検証するというもの。 73年といえば日本へもメロトロンM400Sの正規輸入が始まった年で、翌74年にかけて歌謡曲にも大量にメロトロンの使用が確認出来るいわば日本における「メロトロン元年」のようなもの。 その時期にロンドン(アドヴィジョンスタジオ、トライデントスタジオ)でレコーディングされたのだから、もしかしたら元祖メロトロンであるMellotron Mark IIが使われているかも知れないという仮説で長年このアルバムを聴いていた。 この番組にはそれを解明する情報が散見出来たのでまとめてみることにした。 アルバム発売からちょうど40年後の2013年12月1日、ユニバーサルミュージックのマスタリングスタジオへ井上陽水をはじめ、当時のマネージャー川瀬康雄、アレンジャー星勝、ギタリスト安田裕美らが集合。 発掘された16trのマスターテープは全部で4本。 1本目に紹介されるマスターテープのトラックシートには上から順に「帰れない二人」「待ちぼうけ」「心もよう」と書かれている。 これらは73年6月に国内でレコーディングされており、問題のメロトロントラック2曲「心もよう」「帰れない二人」は既にここで紹介される。 「帰れない二人」のマスターテープ15、16chに収録されているMellotron 3Violinsを再生すると、川瀬康雄が「ビートルズっぽい匂いがするね、メロトロンが」(全員うなづく)とコメント。 その後13、14chのMiniMoogを重ねる。 当時のトラックシートには「ミニ・モーグ」と手書きされていたのに対し、テレビのテロップには「ムーグ」と表示されたりするのも興味深い。 「心もよう」のマスターテープではイントロの構成を検証し、ギター、リズム、ピアノの後に決めてとなる13chのMellotron Fluteを紹介。 星勝が「メロトロンの♪タララ〜でキャッチさが倍増」とコメント。 テロップには「キーボード奏者の深町純が当時最新の電子楽器を持ち込んだ」と表示され、スティービー・ワンダー「迷信」のClavinetを意識しながらエレキチェンバロを使ったと紹介。(アルバムクレジットにはElectric Harpsichordと表記) キーボードマガジン1986年4月号の特集で深町純の自宅スタジオが紹介されてるが、そこにはロンドンで買ったと言うメロトロンM400Sやボールドウィンのエレクトリックチェンバロが置かれていた。 従って国内レコーディングの際、深町氏自前の楽器を使用した事は間違いないと思う。 73年8月9日に「自己嫌悪」「Fun」の2曲が完成したのに続いて8月31日から9月13日に渡りロンドンでレコーディングを行った。 トラックシートに依ると73年9月3日に「あかずの踏切り」「チエちゃん」「氷の世界」「小春おばさん」「おやすみ」の5曲がレコーディングされている。 「小春おばさん」についてはキングクリムゾン「宮殿」を下敷きにした事を容易に想起させるアレンジながら、他の4曲含めMellotron Mark IIはもちろんM400Sも使用されていない。(生ストリングス使用) 別収録でのゲストだったリリー・フランキーは「小春おばさん」について「氷の世界よりも狂ってるのはこの曲ですよ 普遍的な叙情的な詩をあのアレンジで絶叫してる」、同じくゲストのみうらじゅんは「あのプログレで絶叫ですよ」と重ねた。 この曲へロンドンのスタジオにあった(?)かもしれないMellotron Mark IIが使用されていたらどうなっていただろうかと想像してしまう。

 当時、海外録音を謳った作品でメロトロンのクレジットが確認できるのは井上陽水の他にザ・ジャネットやチューリップがあるが、ジャネットに関しては実際は日本で録音されていたと松尾一彦さん(元ジャネット、オフコース)から伺っているので、残るはハリウッドのサンセットスタジオを使用したチューリップだけなのか? 70年代当時、Mellotron Mark IIを使用した日本人アーティストの音源はあるのか探求は続く。

(画像左/日本音楽史上初のミリオンセラーアルバムとなった井上陽水の3rdアルバム「氷の世界」)
(画像中/アルバムヒットの起爆剤となった先行シングル「心もよう/帰れない二人」)
(画像右/当時の関係者によってスタジオで検証されるメロトロンサウンド)

2014年4月29日
ジュエルペット ハッピネス!
 2013年4月27日、当掲示板へメロトロンネタの提供がありました。(通りすがりのオタク様情報ありがとう!) テレビ東京系で放映中のアニメ「ジュエルペット ハッピネス」にメロトロンが出る! どうもそのアニメーション監督が美狂乱の現ベーシスト桜井弘明さんだと言うではないか。 急にジュエルペットだの美狂乱だのメロトロンだの言われ混乱したまま翌週の放送をチェック。 ジュエルペットカフェのかわいいペット店員さんが巨大なめこの妨害に遭いながら、友情を温め魔法の宝石をゲットするという巻。 30分番組中間のいわゆるアイキャッチで主人公のルビーちゃんと共にタップダンス踊るMellotron M400Sが登場。 その後音楽室にあるという設定のメロトロンが画面いっぱいに映され、メロトロンフルートのサウンドまで登場するという荒技。 メロトロンの周りには「ジュエル学園 メロトロンあります ついに来た 音楽室にあのメロトロン400Sが!!」の文字が。 後ろでニヤニヤしているおじさん達の姿が想像できます(笑) 恐らく幼稚園から小学校低学年向けのアニメーションだと思われますが、そんなわけで私のようなおっさんでも楽しめるアニメなのでした。 紆余曲折の末、仲間との友情が高まるとゲットできる魔法の宝石をコレクションしていくという心温まるテーマと、関連グッズの販売(!)が上手いことミックスされた作品。 最近では登場人物(ペット)達が論議する場面で出てくるセリフ「そーだよそーだよソースだよ!」の懐かしいフレーズに胸キュンする私でした。

(画像左/2013年4月27日放映 第4話「なかよしらぶ〜!」でのラブラとメロトロン書籍の衝撃映像)
(画像中/2013年5月4日放映 第5話「どうしても欲しい〜!」のアイキャッチでルビーと踊りながら登場する白いメロトロンM400S)
(画像右/2013年5月4日放映 第5話「どうしても欲しい〜!」劇中に突然登場する白いメロトロンM400S)

2013年12月14日
ザ・シャキーンズのテーマ
 2008年より放映されているNHK教育テレビの人気番組「シャキーン!」に登場する精霊バンド、ザ・シャキーンズのテーマソング。 ハト時計の精霊ポッポ(ヴォーカル、アコギ)、電話の精霊リンデル(エレキギター)、おもちゃの精霊カジャ・グリーモ(ヴォーカル、ベース)、勉強道具の精霊ソロバーニャ(ドラムス)、炊事道具の精霊メシタキーナ(キーボード)の5人組。 バイオリンベースにブラックオイスターのドラムセット、そして本物のメロトロンを使用してビートルズの幻影を追いかけます。(エレキギターはフェンダームスタングという渋い選択) 曲調は「A Hard Day's Night」冒頭のギターそのままに始まる完全ビートリッシュサウンドにクイーン級のブ厚いコーラスとギターワーク...なるほど編曲はやはり永井ルイさんでした。(作詞作曲は放送作家の倉本美津留) 登場するMellotron M400Sは音こそ出していないようですが、このビジュアルは強烈。(素敵なジャケットイラストにも描かれています) 映像に登場する主人公の少年がすれ違う学ランのお兄さんが持っているのはシャキーンズのLPレコード。 しかも掛け帯付きなんて、マニア心をくすぐります。(欲しいぜマジで) シャキーンズの第二弾「ナットクいかへんねん!」もこれまたビートルズの「Taxman」みたいな曲調。 どちらもコード進行、転調が素晴らしいポップな胸キュンソングとなっています。 あまりにイイ曲で感涙モノです。 CDクレジットによるとメロトロンの担当はどちらもギターのリンデルさんとなっています。

(画像左/ついに発売された「ザ・シャキーンズのテーマ」が収録されたスペシャルアルバム CD+DVD)
(画像中/ルックスもイケてる、ザ・シャキーンズの5人)
(画像右/ノリノリでメロトロンを弾くメシタキーナさん)

2011年4月30日
medamoil「ホラネ」P.V.
 ベースの村上潤次、ギター/ヴォーカルの藤田剛、キーボードの北側晋也からなる3ピースロックバンド。 6thシングル「ホラネ」を収録するコンピレーションDVD「OUT OF CONTROL」のリリースを記念し全国ツアー中。 ラウドなギターとソウルフルなヴォーカルを核に、デジタルなリズムシーケンスと5弦のベースラインが土台を支えます。 KORG MS2000(その横にはテルミンも?)を載せたMellotron M400Sを操るキーボードは、フワフワした電子音とMellotron Fluteを多用。 激しいギターロックと思わせながら中盤のソロをMellotronが執ったりするアレンジにもニヤリ。 一筋縄に行かないロックサウンドを聴かせます。 ヘッドバンギングしながらメロトロンソロを弾くキーボードプレイヤーがいるバンドは、そうそうあるもんじゃない。 日本語の歌詞と発声(英語的、巻き舌にならない!)にこだわりをみせるヴォーカルには男気と誠実さを感じる。 もちろんメロトロンバンドとしても要注目。

(画像左/白いスタジオ右側にKORG MS2000を載せたMellotron M400S)
(画像中/ドライフラワーの花びらが落ちるMellotronのトップパネル)
(画像右/シンセのツマミを操作するキーボードの北側晋也)

2011年4月23日
ドロロンえん魔くん
 1973年から74年にかけてフジテレビで放映された、永井豪原作の妖怪アニメーション。 当時小学校へ上がる前の私は、怖いのを我慢しながら観てた記憶があります。 以前からメロトロンの使用が指摘されていましたので、あらためて確認してみました。 第一話「地獄から来た奴ら」始まって間もなくMellotron Choirによる効果音が流れ、場面の空気が一気に凍りつきます。 怪奇事件が起こる時や妖怪が登場する場面、その後の多くの話においてMellotron Choirの怖い音が使用されます。 このMellotron Choirは、ギターアルペジオをバックにしたバージョンや、バンドサウンドをバックにしたバージョンも劇中で使用されていました。 バンドサウンドにはシタール風の音やファズギターが使用されていて、グル−プサウンズからサイケ、アートロックへ移行して行くロックムーブメントとも時代的にシンクロしています。 妖怪ドクロが登場する第9話「日本列島大爆発の日」では、Black Sabbath「Iron Man」のビブラフォンバージョンとも言えるBGMも登場したりしてなかなか楽しめます。 音楽担当はCMソングやアニメ特撮劇伴の大御所筒井広志。 一回目の放送が1973年10月4日ですので、日本国内でメロトロンを導入した音源としてはかなり早い時期であったことに驚かされます。 子供心に怖かったのは暗い色使いの画面構成だけでなく、メロトロンのせいだったかもしれません。

2011年4月17日
トウキョウソナタ
 2008年、日本、オランダ、香港の共同製作映画。 現代家族の断片を描いた黒沢清監督作品。 いきなりMellotron Fluteのシーケンスに導かれ物語が始まります。 音楽は橋本和昌。 映像と音声トラックに広く取られた余白は、物静かなフランス映画を思わせます。 重要な場面転換にはそれぞれのテーマが流れるのですが、それらのほとんどがMellotron Fluteをメインにしたサウンドトラックである事に驚かされます。 Mellotronによる繊細なメロディからプリミティヴなMellotronサウンドの断片まで、ゆっくりと鍵盤を押下する様子が見えるような音作りは、行き詰まりすれ違う家族の風景と驚くほどシンクロします。 映画の後半、小泉今日子が深い絶望感と共に波打ち際へ横たわるシーンにも絶妙のタイミングでMellotron Fluteが登場。 既に何回も登場しているMellotronなのに、この場面で私の涙腺はついに決壊。 何とも味わい深い表情を見せる父親役の香川照之と母親役の小泉今日子に、同世代として(勝手にね)共感し、寂しさや閉塞感がピークを迎えてしまった。 ここにはmoogシンセサイザーやスタインウェイの高級ピアノではなく、絶対にMellotronでしか出せない音世界がありました。 映像の為に音楽があるのか、それとも音楽の為に...と言うかMellotronの為に映像があるのか。 橋本和昌がMellotronの特性を熟知しているであろう事が、その音楽的手法に表れています。 数多くの楽器からMellotronを、またFlute音源を選択した事に間違いは無し。 全ての望みを失うシーンからコミカルなシーンまでもMellotronで表現し尽くしています。 誤解を承知の上で言うが、これはMellotronサウンドを楽しむ為の映画であり、まぎれもなくメロトロン映画の金字塔だと思う。 ズルい、 ズルすぎる...必見。

2011年4月8日
メロトロンプロモーションフィルム
 2004年10月、まだYouTubeも無かった頃、突如インターネット上にアップされた動画にメロトロンマニアが騒然となりました。 1965年に制作されたと言われるMellotron MARK IIのプロモーションフィルムは、進行役に指揮者のEric Robinsonと、楽器解説及び演奏者にマジシャンのDavid Nixonというメロトロン音源を録音した重要人物二人が登場し、更にもう一人の演奏者としてメロトロンデモンストレーターのGeoff Unwinが登場します。 Eric Robinsonはオーケストラ指揮者として大変有名で、BBCでは自らのオーケストラを率いクラシック音楽を生演奏で紹介する番組もやっていましたので、日本で言うところの「オーケストラがやってきた」の山本直純さんのようなイメージでしょうか。 一方David Nixonはイギリスマジシャン界の第一人者であり、テレビタレントとしても大変な人気があったようですので、この二人が揃って新型楽器の開発から宣伝まで行った事は、一般的にも小さい出来事では無かったかもしれません。 メロトロンの原点、今一度じっくり検証してみたいと思います。

 いかにも英国風の邸宅が舞台。 外にはベージュのフォード・サンダーバードが停まっています。 レコード鑑賞をしていたEric Robinsonはカメラに向かい気さくに挨拶すると、自らも開発に携わった新型楽器「メロトロン」(Mellotron MARK II)を紹介すると言って、別の部屋へ移動します。 そこではDavid Nixonがメロトロンのスイッチを操作しEricが来るのを待っていた様子。 Ericに促されてお気に入りの楽器を紹介しはじめるDavidは、メロトロンにはコンピューターが内蔵されていて(実際にはコンピューターは内蔵されていない)、左鍵盤には100種類を超えるリズム音源とバックグラウンド音源、右鍵盤に18種類のリード楽器音源がセットしてあると解説。

 Ericに軽く演奏してくれないかとリクエストされ、Davidは十八番の「Bye Bye Blues」(バイバイブルース、レス・ポール等のヒットとして も知られるポップススタンダード)を左右の人指し指だけで演奏すると言って演奏を始める。(スムーズな演奏をする為、出だし以外は左右の親指と人指し指の計4本を使用) 音源は左鍵盤「Dixie Land/Trombone」、右鍵盤「Vibraphone」を使用。 何とも楽しそうな二人。

 Davidは「Trombone」のバックグラウンド音源も使って演奏すると説明し、左手の親指と小指を大きく開いてリズムとバックグラウンド音源を活用し「Bye Bye Blues」を再演奏。 グッと本格的な演奏になる。 続いてEricに他の音色をリクエストされるとDavidは左鍵盤に「Viennese Waltz」、右鍵盤に「French Accordinon」の音源を選択し「Sous Le Ciel De Paris」(パリの空の下、ジュリエット・グレコの歌唱で有名なシャンソン)を演奏します。 カメラはバックパネルを外した背面から上下動するテープを映します。 演奏を終えたDavidは手をポンとたたき、御機嫌にポーズを決めます。 そしてEricは、メロトロンの可能性を最大限引き出してくれるプロのピアニストを招いていると言い、Geoffを紹介します。

 Geoffは左鍵盤に「Cuban/Afro Cuban」、右鍵盤に「Organ」(Cトラック)の音源をセットし、「El Cumbanchero」(エル・クンバンチェロ、プエルトリコのラテンスタンダード)を演奏します。 左鍵盤のリズムをスタートさせると右鍵盤の激しいグリッサンドで呼応。 間奏ではトラックセレクターで右鍵盤を「Rock Guitar」(Bトラック)に切り替える早業を披露。 ギターソロを終えて再度「Organ」音源へ戻しエンディングへまっしぐら。 再び背面から忙しく上下動するテープを映し、終始超絶テクニックのまま演奏を終えカメラへ振り向いてポーズ。

 カシオトーンやポータトーンの人気機能であるワンフィンガーコード、リズムシンクロなどの演奏補助機能の原点はこのMellotron MARK IIにあります。 鍵盤演奏の技術が無い人にも演奏の門戸を広げる提案を示す事が出来たのは、フレーズ録音された特殊音源を使用出来たからでしょう。 その後、ロック、ポップスのフィールドで頂点に立つ事が出来たのは、存在する音すべてを鍵盤楽器へ収められる可能性と、憂いを帯びた独特の再生音で、それは単なるテープデッキでは無く一つの楽器として認められた結果でした。 「ストローベリー・フィールズ・フォーエバー」のフルートサウンドは、たった1音だけで世界のポップスファンをメロトロンファンにさせる魅力がありました。 そしてビートルズから頂いた御墨付きは最高の幸運であり、メロトロンの存在意義を証明するに十分な物であった事は間違いありません。

2008年5月23日
SMAP×SMAP名曲歌謡祭
 2008年4月21日(月)フジテレビ系列「SMAP×SMAP'08 2週連続2時間スペシャル!!! SMAP×SMAP名曲歌謡祭」がオンエアされました。 TM NETWORKの三人を始め、バービーボーイズ、久保田利伸、EPO、米米クラブ、NENAなど、いわゆる「R35」的な名曲を集めた特別番組です。 小室哲哉さんのキーボードブースにはステージ中央から右側に向かって、Roland V-Synth GT、Fantom G6、黒いAccess Indigo Redback、白いMellotron Mark VI、白いAccess Virus TI Polarがセットしてあります。 Mellotron Mark VIは立奏しやすいようにかさ上げされ、バックパネルが外されて内部が丸見え、そして上面には何も載せないという、メロトロンコンシャスなセッティングになっています。 演奏された「Get Wild」のイントロからMellotronの軽いジャブが始まり、曲中もAccess Indigoとユニゾンで鳴らされ、古臭くなり過ぎない絶妙なサウンドを披露しました。 2コーラス目からSMAPの木村拓也がヴォーカルに加わり、間奏のMellotronソロでは上下する音源テープがテレビ画面一杯に映される快挙にマニアも仰天させられます。 そしてエンディングのアウトロまで丁寧にMellotronで演奏して終了...真際に曲中でも使用したギターストロークのサンプリングを一発鳴らしたのは小室さんの御愛嬌。 イントロから間奏までのMellotronサウンドは、妙にかすれた高音部でしたので、定番の3Violinsでは無くBoys Choirのようにも聴こえました、またアウトロの和音では3Violinsのように聴こえました。 間奏のカメラアングルは、メロトロン有識者(笑)による事前の申し合わせがあったのでしょう、Mellotronの動作構造を捉えた瞬間を全国のお茶の間へ披露する事に成功したと思います。

(画像左/ステージ全景、左から木根尚人、宇都宮隆、小室哲哉)
(画像中/Access IndigoとMellotron Mark VIを演奏する小室さん)
(画像右/大きなモーターや上下するテープまで明らかな間奏のアップ映像)

2008年4月23日
SONGS 奥田民生
 2008年1月23日から再放送を含めて3回放送された、NHK「SONGS」の奥田民生特集。 司会の山口智充さんと民生さんのリラックスしたトークを交えて、5曲のライヴ演奏が披露されました。 バックを固めるメンバーは、キーボード齋藤有太、ドラム湊雅史、ベース小原礼で、ストレートなロックサウンドを意識してか、ドラムとベースも含むヴィンテージ楽器がずらりと画面に登場しました。 キーボードブースには、正面からHammond B3、Hohner Clavinet、Moog Minimoog、Wurlitzer EP200、それにMellotronの代用でManikin MEMOTRONが並んでいます。 2曲目に演奏された「息子」はスタジオ盤同様にMellotron Stringsが使用されましたが、実際に演奏していたのはWurlitzerの下に設置されたYAMAHAのMIDIキーボードで、MEMOTRONには触れていませんでした。 MEMOTRONは音源ユニットとしての機能と、ステージの華としての役割だったのでしょう。 一般のテレビ番組でMEMOTRONが写るのは、これが初めてではないでしょうか?

(画像左/MEMOTRONを背に演奏をする齋藤有太)
(画像中/真っ白なMEMOTRONが一際良く目立つステージ全景)
(画像右/Clavinetを弾く背後にMEMOTRON)

2008年4月12日
みゅーじん TM NETWORK
 2007年12月23日O.A.テレビ東京系音楽番組「みゅーじん/音楽人」は、結成24年目を迎え再集結し、新作「SPEEDWAY」のレコーディングと、「TM NETWORK REMASTER」と題したツアーを敢行中のTM NETWORKを特集しています。 パシフィコ横浜と日本武道館でのライヴ、赤坂のリハーサルスタジオでも、小室哲哉さんのキーボードブース中央には白いMellotron MARK VIがセットされています。 番組O.A.中にMellotronを演奏するシーンはありませんが、打ち合わせなどの映像も含めて何度も画面に大写しになっていました。 テレビ東京のスタッフもプログレモードだったのでしょう、番組BGMにYES「Heart Of The Sunrise」が流れたりします。

(画像左/パシフィコ横浜でのライヴステージ遠景からも白いMellotron MARK VIが確認出来る)
(画像中/リハーサルスタジオのキーボードブース中央に鎮座する白いMellotron MARK VI)
(画像右/下段のMellotron MARK VIが確認出来る日本武道館でのライヴ)

2008年4月12日
Pirates of Silicon Valley
 アップル社のスティーヴ・ジョブズと、友人でありその頭脳であったスティーヴ・ウォズニアック、そして因縁のライバルであるマイクロソフト社のビル・ゲイツらが、黎明期のコンピューター業界へ進出し成功を収めるまでを描いた1999年のドキュメントTVドラマ。(邦題:バトル・オブ・シリコンバレー) リドリー・スコットが監督した伝説的なCM「1984」の撮影現場でジョブズが語りかけるシーンに始まり、ウォズの回想的なナレーションを軸にドラマが進行します。 1971年大学紛争の中、ヒッピーのような生活を送っていたジョブズとウォズを描く初めの一歩では、Mellotronのハーフスピードブラスとストリングスが爆発するMOODY BLUES「Question」(1970年)が流れます。 大成功を収めたApple ][を経て、次期モデルLisaの開発段階でジョブズとウォズらは、グラフィックスとマウスでのインターフェイスを持つゼロックス社のアルトシステムを見て衝撃を受ける事になります。 アップルだけでなく、マイクロソフト社ウインドウズの開発にも重要な役目を果たすこのアルトシステムが登場するシーンには、またもやMOODY BLUESで「Gemini Dream」(1981年)が流れます。 若者が巨大なIBMに立ち向かう構図でもあるこのドラマでは、BGMの全てにその当時の様々なロックヒットを取り上げていますが、2つの重要なシーン共にMOODY BLUESが流れると言うのも、日本におけるMOODY BLUESの冷遇を考えると興味深い選曲です。 その後、ジョブズは一旦アップルをクビになるも、1997年にアップルCEOへ返り咲くところまでドラマは描かれています。

2008年3月23日
Classic Artist THE MOODY BLUES
 MOODY BLUESファンはもちろん、Mellotronマニア必見のDVD。 バンド結成前夜から、オリジナルメンバーが3人になった現在までのすべての時代を回顧するインタビュー集。 キーボードのMike Pinderだけでなく、バンドメンバー、プロデューサー、スタッフのすべてが、Mellotronについて饒舌に語る様子は感動的であり、MOODY BLUESにとっていかにMellotronが重要な楽器であったかを証明しています。 デビュー当時の事を語るインタビューに挿入される、Mellotron MARK I(もしくはII)の白黒フィルムは衝撃的で、私は画面に向かって声を上げるほどでした。 これは1964年、Mellotron開発者のLes Bradley自らが、地方テレビ局の放送用に16ミリフィルムで撮影したもので、鍵盤の動作、ステーション(サイクリング)構造のチェーン駆動の様子、トップパネルをスライドしてセットする様子、テープスプリングの上下等を克明に記録しています。 各人のコメントも興味深く、Mike PinderがJohn Lennonのレコーディングに参加した際、彼のMellotronが使える状態では無かった事や、メロトロン生産工場で働いていた様子を事細かく語ったり、デビュー間も無い頃の移動で、機材車に積まれたMellotronの上でGraeme Edgeが寝ていた事を語るJustin Hayward、フィルモアイーストでの初めてのステージで、オープニングからMellotronの故障でテープが飛び出し、1時間半の間バックスバニーのアニメで場を繋いだ事を語るJohn Lodge、Mellotronのサウンドを甘くする為に苦労した事を語るレコーディングエンジニア、アルバム「Days of・・」において、オーケストラとロックバンドを繋ぐ役割をMellotronが果たしたと語るGraeme Edgeなど、その情報量は多く、これらはほんの一部にしか過ぎません。 本編のインタビューだけで152分ものボリュームですが、退屈さは一切無し、瞬きすら惜しいほどの決定版DVDです。

(画像左から2番目/1964年に撮影された貴重極まりないMellotronのフィルム、鍵盤が動く様子が撮影されているが、背面から誰かが操作しているのだろうか?)
(画像右から2番目/サイケデリック作品の象徴として紹介される「OM」のプロモーションフィルムに登場するMellotron MARK II)
(画像右/DECCAの古いスタジオを改装し、自ら所有していた「Threshold Studio」の中心には、黒いMellotron MARK Vが設置されている)

2008年1月20日
Future Memories Live on TV
 Patrick Morazの故郷、スイスのテレビで放映されたワンマンキーボードパフォーマンス。 1979年の「Future Memories I」と、1982年の「Future Memories II」に加え、最新インタビューが収録されています。 既に発売されていたレコードやCD盤では伺い知る事の出来なかった、彼のMellotronサウンドの全貌がわかる貴重映像。 「Future Memories I」のエレクトリックパートである「Metamorphoses」では、円形に取り囲む十数台のキーボードの中に黒いMellotron MARK Vと白いM400Sをセットしています。 Roland CR-78のリズムトラックをベースに、聴き慣れたMellotron Flute、Stringsだけでなく「ドーン」「オー」と言ったヒューマンボイスに加え、「コンフュージョン」と具体的な言葉を発するMellotronの特注テープが使用されています。 またシンセサイザーによるSEもMellotronに多く収められており、デジタルサンプラー前夜のキーボードオーケストレーションにおいて重要な役割を果たしている事がわかります。

 「Future Memories II」では、YAMAHA GS-1をメインに据えたブルーバック(クロマキー効果)のスタジオへ、黒いMellotron MARK Vと黒いM400S(Novatronか?)を含むキーボードをセットしています。 後にMOODY BLUESへ在籍した際、サポートのキーボーディストが加入したにも関わらず、すべてのパートを一人で演奏したがったとのエピソードがある通り、忙しくワンマンプレイする彼はなんともいきいきしています。 インタビュー映像では、明るく気さくに話す姿が印象的で、Mellotronについて「メロトロンはいつも不安定で、常に綱渡りをしているようだったよ」と答えています。

(画像左から2番目/左手中指でMellotron MARK Vの鍵盤を押したまま、トラックセレクターを操作)
(画像右から2番目/多くのSEがセットされた白いMellotron M400S、右端35鍵目に「コンフュージョン」のボイス)
(画像右/中世ヨーロッパ調の衣装を身に纏ったPatrickの右手下段に、黒いM400S)

2008年1月20日
P.F.M. La Luna Nuova
 アルバム「L'isola Di Niente」(1974年)の頃のプロモーション映像でしょうか、「La Luna Nuova」(Four Holes in The Groundの母国語版)のスタジオ音源とライヴ映像が組み合わされています。 向かって右側にセットされたキーボードブースには、モジュラー型のmoogシンセサイザーとHAMMONDオルガン、そして珍しいMellotron M400SのEMIバージョン(生産数100台)がセットされています。 標準のM400Sがシルバーのコントロールパネルであるのに対し、黒いコントロールパネルであったり、トラックセレクターを含めた4つの黒く丸いノブに、特徴的なシルバーリングがあったり、背面には標準のM400Sとは違う位置にアウトレットがあるなど、EMIバージョンと確認出来る特徴を見つける事が出来ます。

(画像左/Mellotron Stringsのパートを演奏するFlavio Premoli)
(画像中/鍵盤左の黒いコントロールパネルと、4つの丸いノブが確認出来ます)
(画像右/EMIバージョンの特徴的な背面がわかるショット)

情報提供 minmic氏

2007年11月1日
NEARFEST 2005 RISING TO THE SURFACE
 NEARFEST 2005(North East Art Rock Festival)における、LE ORME、IQ、THE MUFFINS、KENSOなど、9組のライヴを200分に渡り収録した映像集。 ステージに2台もMellotronを持ち込んだのは、デビュー間もないWOBBLERで、WEBサイトに公開されている18分を超えるデモソング「Imperial Winter White Dwarf」を披露しています。 キーボーディストのLars Fredrik Froislieは、Mellotron M400S、400SM、Fender Rhodes、Clavinet、Hammond B3、Moog Minimoog Voyager、Roland Space Echo RE-101、201などを四方に囲んだ、豪華なセットをステージ左に構えています。 フルート奏者をフロントに据え、北欧シンフォニックロックのエッセンスを集大成させたようなスタイルに、Mellotron 3Violins、Choirを響かせていました。 圧倒的なステージングで格上の貫禄を見せたIQ、キレのいい演奏を聞かせたKnight AreaもMellotron ChoirのSampleを多用し、ステージを盛り上げました。

(画像左から2番目/上にMinimoog Voyagerを乗せた、ステージ奥のMellotron 400SM)
(画像右から2番目/Rolandのテープエコー2台を乗せた、ステージ正面のMellotron M400S)
(画像右/バリライトで綺麗に演出されたステージ全景)

2007年10月1日
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