ARTIST INDEX

■ CDS&RECORDS [5/11]
愛すべきMellotron野郎
「Tim Christensen/Secrets On Parade」(2000年 DENMARK/画像左)

 デンマークの人気バンドDIZZY MIZZ LIZZY解散後、5年のブランクを経てリリースされたTim Christensenの1stソロアルバム。 アイドルバンド的にも見えたDIZZY MIZZ LIZZYですが、バンド末期にはREMのようなサウンドへの変化を求めていたらしく、ソロとなった本作では豊かなメロディセンスはそのままに、ソリッドでストレートなロックサウンドへ変化しています。 ボーナストラックを含む全13曲中8曲にMellotron Strings、Flute、Brassが導入されており、BEATLESサウンドを彷佛とさせるTimの音楽性とナイーブな歌唱に、完璧にマッチしています。 特にミドルテンポのラヴソング「Love Is A Matter Of...」におけるMellotron Stringsと、Timの達観したかのような歌の組み合わせは素晴らしく、近年のベストMellotronポップと言っても過言ではないでしょう。 派手な演出や過剰な表現は一切無し、人柄の良さが誠実なメロディとなったエバーグリーンな名盤。 サンクスクレジットには、Streetly ElectronicsのMartinとJohnの名前も並んでいます。

「Tim Christensen/Honeyburst」(2003年 DENMARK/画像右)

 前作の延長線上にある3年振りの2ndアルバム。 シークレットトラック、ボーナストラック含めた全14曲中12曲にMellotronを使用するという溺愛振りに加え、本作ではOptiganまでも導入しバンドサウンドも更にビンテージ指向を加速させています。 一発録りかと思わせるストレートな演奏が、変わらぬ美しいメロディを際立たせていて、Mellotronの使用にも最大限のアレンジが施されています。 Mellotron Stringsが鳴り続けるキャッチーな「Isolation here I come」や、Mellotron Female Choirが無気味な「Don't leave me but leave me alone」、Mellotron Stringsの中でJohn Lennonが歌っている様な「How far you go」など、この人はどんだけMellotronが好きなんだよ! とツッコミを入れつつニヤける作品ばかり。 さて、次作はどうなるのでしょうか、気になります。

(画像中/Secrets On Paradeのブックレットには2台のMellotron M400Sが並ぶ自宅スタジオが!)

2007年7月27日
クラシックロック
「Robert John Godfrey/Fall Of Hyperion」(1974年 UK/画像左)

 THE ENIDのプロトタイプとも言えるクラシックロック作品。 Robert John Godfreyの流麗なピアノを先頭に、オペラ的歌唱のボーカル、それを支えるパーカッション、そして圧倒的物量で迫るMellotron Stringsが鬼気迫る傑作。 美しいメロディのメインテーマを、じわじわと表情を変化させながら繰り返すアルバムトップ「The Raven」から、生命力漲る歌唱とMellotronの轟音が螺旋を描いて上昇して行きます。 ドラムとベースのリズム隊は不在で、ティンパニーとシンバルが脅迫的に煽り立てる様は、最早ロックのアルバムとは言えないかもしれません。 オーケストラの弦楽をすべてMellotronに置き換えた音は、Mellotronの可能性を検証する貴重な資料であると同時に、数あるMellotronアルバムの中でもトップクラスとして推薦せざるを得ない作品です。

「THE ENID/In the egion of the Summer Stars」(1976年 UK/画像右)

 Robert John Godfreyを中心に1974年に結成され、76年にマイナーレーベルBUKからリリースされた1stアルバム。 ドラム、ベースを含む編成になったおかげで、Robert John Godfrey「Fall Of Hyperion」が持っていた個性はロック的範疇に埋没した感はありますが、それでも美旋律を追求する非ジャズ、非ブルースのクラシカルロックの本流は今でも色褪せる事はありません。 B面「The Sun」には前述のアルバムと共通のメロディを持って来たりして、この作品が同一線上にある事を暗に示しているようです。 アルバム最後「The Last Judgement」「In The Region Of The Summer Stars」には、Mellotron Choirが導入されシリアスなムードを形成しています。

2007年7月26日
Erik Norlander
「ROCKET SCIENTISTS/Brutal Architecture」(1996年 USA/画像左)

 Erik Norlander率いるプロジェクトROCKET SCIENTISTSの2ndアルバム。 Erikの趣味が反映してか、アメリカンプログレというには陰りの多いブリティッシュ指向の面白い作品になっています。 デジタルシンセの無機的な印象を中和するように、Mellotron M400Sの活躍する場が多く設けられている事と、YAMAHA VL-1の独特なリードシンセが温もりを感じさせるのだと思います。 アルバムのイントロダクションたる1曲目を終えて、2曲目「Wake Me Up」からMellotron Stringsが大爆発、バックからリードから全面弾きっぱなしの聞き物。 左手でピッチコントロールノブを操作し、右手で鍵盤を押さえるErikの姿が見えるかのような激しいベンド奏法が快感です。 「Resolution」では、小刻みなStickベースのブレイクを狙ってMellotron Cello、Stringsが登場します。 「Rainy Days And Pastel Grays」では、ドラマチックなギターソロを支える様にMellotron Stringが、「Mariner」ではイントロからMellotron Stringsの洪水で沈痛なムード。 途中から流れる女声ボーカルは、Mellotron Female Solo Voice(Chamberlinからコンバートしたテープか、サンプラーかは不明)ではないでしょうか。 Lana Laneもボーカルに加わるボーナストラック「Stardust」がアルバムラストですが、これがまた凄いMellotronソングで儲けものです。 YES「And You And I」を思わすゆったりした歌もののバックは、Mellotron CelloやらStrings(非3Violinsに聞こえる)に加えて、Mellotron BrassやClarinetと思われる音の重奏で大満足のエンディングです。

「LANA LANE/Queen of the Ocean」(1999年 USA/画像右)

 近年多作を極めるErik Norlander関連リリースラッシュの源流はこの辺りからか。 このアルバムは、元々は別働隊だったLANA LANEとROCKET SCIENTISTSの境界線もうやむやで、ゲストと称しほとんどのメンバーが合流しています。 タイトルトラック「Queen of the Ocean」と、続く「Let Heaven In」にMellotron Flute、Stringsが少し使用されていますが、Strings類はほとんどシンセからの音に聴こえます。 スケールの大きい派手なアレンジにもかかわらず、予定調和的な楽曲と綺麗すぎるサウンドメイキングに、ロックらしい熱気を感じないのが残念です。

2007年7月26日
Al Kooper
「Al Kooper/New York City(You're A Woman)」(1971年 USA/画像左)

 1970年9月ハリウッドのコロムビアスタジオでレコーディングを開始し、途中11月にロンドンのトライデントスタジオで、SPRINGのレコーディングに使用されたMellotron MARK IIを借りてタイトルトラックを含む数曲をレコーディングした4thアルバム。 生まれ育ったニューヨークへの愛憎をテーマにした1曲目「New York City(You're A Woman)」から、哀愁たっぷりの歌声と共に、これぞMellotronサウンドと叫びたくなるような最高峰のMellotron Stringsを堪能する事が出来ます。 コレですよコレ、もう本物は全然違う! サンプルMellotronだけで喜んでる場合じゃ無いと猛省する私。 「Can You Hear It Now」では静かなMellotron Strings、「Going Quietly Mad」では苺畑のようなMellotron Fluteに始まり、Mellotron Stringsが活躍します。 「Come Down In Time」ではおぼろげなRhodesの間を縫う様にMellotron Fluteが流れ、ギターソロを挟む中後半からMellotron Stringsの音圧にノックアウトされます。 「Nightmare #5」でも哀愁たっぷりのMellotron Strings、Fluteがいい味出してます。 アメリカ録音の曲はソウルフルで、モータウンぽいものまであるのですが、イギリス録音は内省的である意味イギリス的なサウンドになっているのが面白いです。 ジャケット内側にはMellotronを貸してもらったSPRINGとそのプロデューサーGus Dudgeonへの謝辞が書かれています。

「Al Kooper/A Possible Projection Of The Future/Childhood's End」(1972年 USA/画像右)

 前作の成功に気を良くしたのか、1曲を除いてロンドンのエアスタジオでレコーディングされ、全10曲中9曲に堂々とMellotronを導入した意欲作。 Mellotronが相当気に入ったのでしょう、Strings、Flute、Celloの音色を様々なフレーズで演奏し、どこを切ってもMellotronが出て来る金太郎飴状態です。 特に、楽曲に収め難いと思われるMellotron Celloを積極的に使うセンスは素晴らしく、前作を経てMellotronの特性を一気に体得したものと思われます。 表現力豊かで哀愁漂う歌声に、Mellotronサウンドがぴったりはまります。

2007年7月25日
スペイン産
「Eduardo Bort/Eduardo Bort」(1974年 SPAIN/画像左)

 ユーロロックスペイン産の人気盤、ギタリストEduardo Bortの1stアルバム。 ジャケットを見てフォーキーな内容かと思えば、自身を含む総勢7名のバンド編成で東欧のハードロックを思わせるような、アナログシンセや熱いエレキギターが飛び交うエネルギッシュなロックアルバムでした。 キーボードプレイヤーPepe Douganは、B面トップの「Picturs of Sadness "Caudros de tristeza"」から目の覚めるようなMellotron Stringsを導入し、続く組曲の「Yann」「En las Riberas del Yann」には、ドラマーのVicente AlcanizまでもMellotron Strings、Fluteのソロを披露しています。 エンディングまで鳴りっぱなしの壮大なMellotronソロを聴く為だけに、このアルバムを入手しても間違いは無いでしょう。 音から察するに使用するのはMellotron MARK IIでしょうか、結構な早さのフレーズにリスナーを乗せて宇宙へ飛び出さんばかりの勢いです。

「GRANADA/Hablo De Una Tierra」(1975年 SPAIN/画像右)

 テーブルのざくろを前にポーズをとるマルチプレイヤーCarlos Carcamo率いるGRANADAの1stアルバム。 冒頭から大地より湧き出るようなMellotron Strings(MARK IIでしょう)が登場し、ジャジーでありながら洗練され過ぎない土臭さと骨太さに圧倒されます。 B面ラストを除く5曲にMellotron Stringsが大量に使われていて、PFM、JETHRO TULL、KING CRIMSONを彷佛とさせるバリエーション豊かな楽曲を、濃厚なMellotron味で楽しむ事が出来ます。 特に3曲目タイトルトラック「Hablo De Una Tierra」における、スパニッシュギターに絡む壮絶なMellotronは格別で、スペイン産ならではの情熱的な味わいです。

2007年7月25日
Mellotron 4Track
「STRANGE ADVANCE/Worlds Away」(1982年 CANADA/画像左)

 1980年代エレクトロポップの典型的なサウンドを持ってデビューした、カナダの3人組STRANGE ADVANCEの1stアルバム。 プロデューサーに大物Bruce Fairbairnを迎え、エレポップブームの波に乗りチャートを賑わしました。 キーボードとドラムを担当するDrew Arnottは、ズラリと並ぶシンセサイザークレジットの中に、自ら所有する大変貴重なMellotron 4Trackを並べています。 タイトルトラック「Worlds Away」では、エレクトリックパーカッションとシンセサイザーの隙間を埋めるように哀愁たっぷりのMellotron Stringsを導入しています。 アメリカでのデビューシングルとなった「She Controls Me」では、超ポップな売れ線サウンドに乗せて、Mellotron Choirが更に盛り上げます。 TR-808ハンドクラップ連発の「Hold On To The Nite」でも、終盤にMellotron Choirが鳴っているように聴こえます。 しかしMellotron 4Trackはレコーディングで使い物にならず、M400Sを使ったとするDrew Arnottの発言もあり、確かに音で4Trackと判別する事も難しいのが事実です。 「Mellotron 4Track」とは別にもう一つ「Mellotron I」とクレジットがありますが、これは恐らくMellotron MARK Iという事ではないでしょうから、M400Sを指しているのかも知れません。

「AEROSMITH/Parmanent Vacation」(1987年 USA/画像右)

 大ヒットアルバムとなった本作は、Geffinからオリジナルメンバーで復活後の2作目。 プロデューサーに人気絶頂Bruce Fairbairnを据えて、カナダはLittle Mountain Sound Studioでレコーディングされた点は、前述のSTRANGE ADVANCEと全く同じ。 しかもレコーディングエンジニアまで同じな上に、ゲストプレイヤーとしてMellotronをプレイするのはSTRANGE ADVANCEのDrew Arnottときているから驚き。 大ヒットしたお家芸バラード「Angel」では、Steven Tylerの歌に寄り添うようにMellotron Fluteが囁き、サビ以降バックの哀愁をMellotron Stringsが一手に背負い、Mellotronマニアを泣かせてくれます。 LED ZEPPELIN「Kasimir」みたいなアルバムラストのヘヴィナンバー「The Movie」では、混沌とした音の塊の中にMellotron Choirを確認する事が出来ます。 う〜む、これもMellotron 4Trackじゃないんだろうなあ。

2007年7月22日
山室英美子
「山室英美子/山室英美子」(1974年 JAPAN)

 トワ・エ・モワ解散後、ソロとなっての1stアルバム。 プロデュースは武藤敏史で、木田高介、石川鷹彦らの名手に加え、ブレッド&バターや新進のザ・ジャネットをバックコーラスに迎える力作。 編曲を手掛けるのはマルチプレイヤー木田高介で、郷愁誘う5曲目「かなしみ」に、深くリバーブを掛けイコライズで音を硬くした、Mellotron 3Violinsを導入しています。 楽曲中間部のソロ、終盤、エンディングに、まるでSolinaみたいな音でMellotronが綺麗に鳴っています。 Mellotronクレジットには木田、山室、両氏の名前があります。

2007年7月21日
新居昭乃
「新居昭乃/エデン」(2004年 JAPAN)

 種ともこ、PSY・S、チャラ、原田節らとの多彩な活動でおなじみの新居昭乃、2004年リリースの7thアルバム。 フレンチポップスを思わせる独特の間合いを持ったメロディが大変美しい本作は、穂刈久明、細海魚、Great 3、ASA-CHANGらをサウンドプロデューサー、プレイヤーに迎え、3年の制作期間をかけた密度の高い作品に仕上げられています。 Mellotronのクレジットはありませんが、4曲に明らかなMellotronサウンドを取り入れています。 CMソングにもなっていた「虹色の惑星」ではビブラートの掛かったMellotron Fluteに始まり、曲中流れ続けるか細いMellotron Stringsに、なんとも切なくなります。 ヴィンテージリズムマシンの音が心地よい「Pool」では、サビにふわふわとMellotron Fluteが流れ、「バニラ」では遠くで退廃的なMellotron Stringsが聞こえます。 「神様の午後」では、細海魚のWulitzerの隙間を縫ってMellotron Stringsが間奏をリードします。 音の余白を綺麗に残し、空間の広がりを感じさせる素晴らしいアレンジと、これだけ良いMellotronソングでありながら、Mellotron Samplesともクレジットしない潔さに敬服いたします。

2007年7月19日
米国産三十年モノ
「ZOLDAR & CLARK/ZOLDAR & CLARK」(1977年 USA/画像左)

 妙なデザインのジャケットとは裏腹に、航空会社のCMソングのようなキャッチーな「Touch the Sky」で幕を開ける本作は、YES影響下のSTYXやJOURNEYと同じ分類が出来ると思います。 Chris Squireばりのゴリゴリベースに、凝りまくったアレンジと厚いコーラスワーク、天空を漂う派手なシンセやMellotronはその筋の人ならピンと来る仕上がり。 「Now is the Time」ではMellotron Strings、「The Ghost of Way」では混沌としたイントロからMellotron Brass、Stringsが使用され、曲中にはMellotron ChoirやStringsの激しいソロが顔を出します。 ジャズセッション風の「Lunar Progressions」では不穏なMellotron Strings、ギター弾き語り風の「In Time」ではMellotron Cello独特のチリチリした音がバックを流したかと思えば、サビに目の覚めるようなMellotron Stringsの一山を越えて、終盤まで美味しいMellotron三昧。 アルバムラスト「Day After Day」でも、ピッチベンドやボリュームペダルでスムーズに演奏されたMellotron StringsとCelloが上品です。

「LIFT/Caverns Of Your Brain」(1977年 USA/画像中)

 1974年にレコーディングされていて、1977年にようやくリリースされた作品。 ハードでスペイシーな印象は、アメリカンプログレの御多分に漏れずYESやELPの影響下にあるものですが、オリジナリティは高くその勢いと上昇指向はなかなか爽快です。 キーボードのChip Gremillionは、Hammond B3、Moog、Mellotron等を縦横無尽に操り、1曲目「Simplicity」からMellotron Stringsで快走します。 続くスローな「Caverns」ではMellotron Choirが曲のカラーを決定し、Mellotron Stringsの壮大なソロを経てエンディングとなります。 けたたましい勢いのオルガンロック「Buttercup Boogie」では、Hammondの壁の隙間からMellotron Brassが顔を出します。 ラスト4曲目「Trippin' Over The Rainbow」でもその勢いは止まらず、Mellotron Strings、ChoirとMoogでブッ飛ばして行きます。 メインリズムのモチーフはGENESIS「Supper's Ready Part Two」でしょうか、ハード一辺倒ではなく途中に織りまぜる甘いメロディが聴き手をグッと惹き付けます。 作曲能力と演奏技術は非常に高く、1974年当時バンドの平均年齢が19才だったなんて信じられない高水準アルバムです。

「TOPPER/AT LAST」(1977年 USA/画像右)

 タイトルが暗示したのでしょうか、TOPPER唯一の作品。 1曲目はアナログシンセとタイトなドラムがリードするハードな印象のポップロック。 2曲目は、ファンキーなギターカッティングにスペイシーなシンセのディスコもどきで、気分はEARTH WIND & FIRE。 アルバムのハイライトは3曲目「Smile For The Clown」で、LED ZEPPELIN「天国への階段」完全パクリで失笑必至。 イントロからRudy Passonnoの弾くヨレヨレのMellotron 3Violinsが悲愴感を出し、曲中もMellotron FluteのバッキングでZEPになりきっています。 本人達はいたって真剣ですが、しかしまあ同じ曲によくもこれだけ違うメロディを乗せたものだと感心します。 B面はシンセ多重録音のインストシンフォニー「Phaze 1」に始まり、続く「Phaze 2」もアナログシンセがビュンビュン唸るストレートなロック。 フォーキーな「Devils RX」、ハードロックなアルバムラスト「Hells Fire」と続きます。 バラエティに富んだ内容はカテゴライズしにくい作品ですが、演奏も安定していて1回聴くとクセになる愛すべきB級作品です。

「ZOLDAR & CLARK」資料提供 yes.t氏

2007年7月15日
覆面バンド
「BE/Fruits Factory」(1980年 JAPAN)

 四人囃子の覆面バンドとの情報で入手するも、長戸大幸や織田哲郎でおなじみの音楽制作会社BEINGの覆面バンドだったという1枚。 ジャケットのガスマスクをしたメンバーは、てっきり森園勝敏をはじめとする四人囃子メンバーだと思っていたのになあ。 クレジットはすべてインチキ外人名義で全貌はわかりませんが、織田哲郎、河内淳一(KUWATA BAND、他)、坂本ミツワ(東京ブラボー、他)らの参加する、60年代の洋楽曲をニューウェーブ、テクノポップアレンジでカバーするバンドです。 THE WHO「Happy Juck」を坂本ミツワ嬢が歌い、Mellotron FluteとStringsが合の手を入れるというキュートな仕上がりは、途中Mellotron Fluteの速弾きを挟み、エンディングもそのままFluteで決めるなどなかなかの名演。 そして織田哲郎が歌うTHE WHO「I'm a Boy」では、イントロに何故かFOCUS「Hocus Pocus」のヨーデルをMellotron Fluteで再現し、その唐突さに度胆を抜かれます。 WHOとMellotronの相性が良いかどうかは別にして、隠れたMellotronの名演を発掘する事が出来ました。 Mellotronを演奏するのは、東京ブラボーでオルガンを担当していた坂本ミツワでしょうか。

2007年7月7日
本田ユカ 関連
「Sean Lennon/into the sun」(1998年 USA/画像左)

 JohnとYokoの息子Sean Lennonのデビュー作。 Julianがデビューした時のような、あからさまなBEATLES風サウンドではないけれど、聴き込めば聴き込むほど、現代版BEATLESに聴こえてくるから不思議。 ボサノバ、ジャズ、エレクトロニカ等々バラエティに富んだ曲のあちこちに美味しい音のキーワードが隠されています。 CIBO MATTのメンバー全員参加の上、プロデュースもCIBO MATTの本田ユカが担当しているので、ポップでマニアックな音作りはほぼ共通のイメージ。 MellotronとMellotron SampleのクレジットがSean、本田ユカの両方にあり、BEACH BOYSやBEATLESを彷佛とさせる「queue」では、イントロからMARK IIを思わせるイイ音でMellotron Stringsが大活躍。 ジャジーな「sean's theme」では、間奏にMellotron Celloのフレーズが違和感無く登場し、うっかり聴き逃しそうな完成度に満足です。

「CIBO MATTO/STEREO☆TYPE A」(1999年 USA/画像右)

 本田ユカ、羽鳥美保の二人に加え、Sean Lennon、Timo Ellisを正式メンバーに加えた2ndアルバム。 エレクトロニカ、オルタナ、ボサノバ、ヒップホップなど、様々なジャンルをセンス良く融合させる感覚は、さすがMitchell Froomが見い出したアーティストだと感心します。 ヒップホップ風の「Clouds」にはMellotron FluteとStringsが登場し、アンビエントテクノ風の「Mortming」は、いきなりChamberlin Solo Female Voiceで始まり、しばらくしてMellotron 8Voice ChoirとStringsが重なる仕掛けあり。 Mellotronに関連するクレジットは、本田ユカにsamplerとありますので、使っているのはMellotron ArchivesのサンプリングCDでしょうか。

2007年7月7日
モーガンスタジオ
 1960年代からブリティッシュ・サイケデリック・ロックの名盤を多く生み出した、モーガンスタジオの作品からから2枚。

「PUSSY/PUSSY PLAYS」(1969年 UK/画像左)

 猫の鳴き声に始まるサイケビートポップの1曲目(これが物凄くカッコイイ!)、牛の鳴き声やテルミンの大暴走がお化け屋敷状態の4曲目、Mellotron Saxのフレーズに始まり、ピアノとオルガンの悲愴感に包まれた5曲目「Tragedy In F Minor」など、やりたい放題のサイケデリックアルバム。 バラエティに富んでいるのはもちろん、どの曲もアレンジ、演奏共に良質でサマになっているのがこのバンドの恐ろしいところです。 前述の「Tragedy In F Minor」は、終盤にキークリックもあらわなMellotron Saxの重奏でエンディングを迎え、その筋の期待を裏切る事はありません。 キーボードはPeter Whitemanでしょうか。

「ORANGE BICYCLE/ORANGE BICYCLE」(1970年 UK/画像右)

 プロデューサー、アレンジャーとしても定評のあるWilson Maloneが中心となって、1960年代後半から活動するORANGE BICYCLE唯一のアルバム。 Bob DylanやElton Johnのカバーを中心に収めらていて、ハスキーなボーカルに巧みなコーラスワークと、それを支える堅実な演奏がブリティッシュ然とした風合いを醸し出しています。 Wilson Maloneのリリカルなピアノとオルガン、Bernie Leeのファズギターが楽曲の大半をリードしますが「Come Tomorrow Morning」のエンディングでは、タイトルの通り爽やかな朝日を思わせるMellotronストリングスが登場します。 何度も眺めたくなるHIPGNOSISのカバーアートも素晴らしい。

2007年7月4日
globe
「globe/DON'T LOOK BACK」(2000年 JAPAN)

 2000年11月にMellotron M400SとMARK VIを導入した小室哲哉は、同年12月5日から、TM NETWORKのプログレツアー「Major Turn-Round」へその2台を帯同し、スタジオアルバムを12月25日にリリースしました。 そのプログレムーヴメントの最中、別ユニットglobeもMellotronを使用しています。 2000年11月22日にリリースされた、globe24枚目のシングル。 ケイコが歌いマークがラップをするという、いつも通りのスタイルで進みますが、2回の間奏で小室哲哉がRick Wakemanのハレルヤコーラス(ライヴステージでおなじみMellotron Choirのアレね)を、そのまま丸ごと演奏するという仰天の内容になっています。 Mellotronを使って、いたいけな少年少女を驚かせたつもりが、実際驚く(喜ぶ)のはおじさんだったというお話!

 追補:globe「DON'T LOOK BACK」について、小室哲哉氏はキーボードマガジンのインタビューでMellotronサンプルを使用したと発言している模様です。 lu-さん、情報ありがとうございます。

2007年6月28日
極東家族楽団とその後
「FAR EAST FAMILY BAND/Parallel World(多元宇宙への旅)」(1976年 JAPAN/画像左)

 1stアルバム「The Cave Down To The Earth(地球空洞説)」の成功を受け、Klaus Schulzeプロデュースの元、ロンドンでレコーディングされた2ndアルバム。 和風TANGERIN DREAMかPINK FLOYDかといった内容は、比較的起伏の少ない瞑想ロックといった感じですが、手数の多い生ドラムのせいか思ったよりも肉感的です。 1stアルバムの続編と言われるA面「生の拡張 時空間の洪水」は、無機的なTANGERIN DREAM風、「心」はPINK FLOYD風の楽曲で、かなりエフェクトが掛けられたMellotron Fluteと3violinsが使用されています。 フリーセッションのレコーディングから編集されたと思われるB面は、淡々とした展開でだだっ広い音空間が広がり、時おり飛び出すシンセやボーカルをアクセントとしています。 終盤に流れるMellotron 3ViolinsとChoirのフレーズは、暗黒の宇宙空間に光が注したかのような眩しさで、Mellotronマニアの心を満たしてくれます。 キーボードプレイヤーは、伊藤詳と高橋正明(後の喜多郎)の両名で、どちらにもMellotronのクレジットがあります。

「伊藤詳/やすらぎを、君に。(Inner Light of Life)」(1978年 JAPAN/画像右)

 1976年にFAR EAST FAMILY BANDを脱退した伊藤詳は、自己のバンドRISING SUNを経てFANTASIAを結成、そしてこのようなシンセサイザーアルバムも手掛けました。 自筆のライナーによれば「A面で鎮静効果(ヒステリー、興奮、ノイローゼ)。 B面では催眠効果(不眠症、疲労、etc)を出したつもりです。 これから先、2作目、3作目と最終的には、自閉症、白血病に効果のある音楽を創作して行きたいと思っています。(中略)これは科学への挑戦でもあると思っています。」とあり、本格的に音楽療法へ取り組んでいた様子が伺われます。 A面「霊の門」では、ストリングシンセとMellotron Choirの大合唱をバックにソロシンセが歌うという、Mellotronマニアにとっては鎮静効果の低い素晴らしい内容。 B面「光からの生命」ではシンセのサンプル&ホールドがゆっくり流れる中、鳥の声と波の音をバックにMellotron Choirが厳かに登場し、そこへ加わるソロシンセがなんとも神秘的です。 「未来への歩み」ではMellotron Choirの大合唱とシンセシーケンスをバックに女声スキャットが加わるというPINK FLOYDチックな展開。 続く「山上のやすらぎ」にはMellotronは登場しないものの、モロにDavid Gilmourなギターソロの登場で、ニヤリとさせられます。 また、喜多郎との共通性を感じさせるフレーズや音色の選択も発見したりして、これには同じバンドの出身なんだなと妙に納得させられます。

2007年6月25日
ホッピー神山 関連
「大文字/Into a blind alley 迷宮入り」(2004年 JAPAN/画像左)

 ホッピー神山、吉田達也、ナスノミツルの大文字、2004年は渋谷O-Westでのライヴ。 ジャズ風、シンフォ風、ZAPPA風、チェンバー風、変幻自在のフリーキーなセッションに、まるでMAGMAのようなホッピー、吉田両氏の脅迫ボイスが重なる(疑似?)プログレッシヴロック。 キーボードはRhodes系のピアノをベースに、ファズのかかったオルガン、Mellotron、Mini MOOGなど、ジャケット内側の写真ではコンパクトに見えるセットから、多彩な音を出しているようです。 「Starstruck」ではMellotronストリングス、「Lunaria」ではMellotronコーラス、「Moonface」ではMellotronコーラス、フルートが登場し、フルートは一瞬苺畑風にリズムを刻むのが御愛嬌で、コーラスはエンディングで暴走大爆発します。 ラストの「Perseus」でもMellotronストリングスが途中に登場し、KING CRIMSON「ISLAND」を思わせるような耽美な瞬間が訪れたと思えば、またもやMAGMA風の奇声に乗ってMellotronストリングスの大暴走と共にエンディング。 こんなのも余裕で出来ちゃうアイデアと技量があるって、ほんとに凄いねえ、ある意味これはパロディだもの。

「RAEL/Birth Of Monsters」(1990年 JAPAN/画像中)

 元THE ROOSTERSの下山淳とホッピー神山のユニット。 一回限りのユニットだそうで、音楽性も全方向に向いており、ロック、ポップ、サイケ、ニューウェーブとあらゆる事をやったという印象です。 9曲目「Arrive to my life」はワンテーマのシンプルな曲で、ガムラン風のエスニックなリズムに乗り、生々しいMellotronストリングスが楽曲をリードします。 11曲目「Yeah! Yeah! Yeah! Yeah! Yeah!」でもMellotronストリングスとコーラスが使われているように聴こえます。

「小泉今日子 スーパーセッション/BEAT-POP」(1988年 JAPAN/画像右)

 アイドルパワー全開、人気絶頂のkyon2(←これがわかる人はおっさん)の元へ集結したゲスト、ホッピー神山、小室哲哉、戸田誠司、加藤ひさし、サンプラザ中野、久保田利伸、サエキけんぞう、窪田晴男、布袋寅泰、野村義男、岡野ハジメ、下山淳、スティーブ衛藤、松武秀樹、他多数が入り乱れてのレコーディングとなった超豪華版。 時代のムードや、流行りの音を反映して、明るくパワフルな曲が並んでいます。 アルバム最後の「TELL ME〜THE END」では、途中からテープアタック音と共に明らかにMellotron Fluteとわかる音が出てきて驚かされます。

 ホッピーさんは1985年頃に、調子の良いNOVATRONから愛用のEmulator IIへ自家サンプリングをしています。 そしてスタジオではEmulator IIを、自宅ではMellotron M400Sを使っているとインタビューに答えてらっしゃいますので、PINK全盛期も含め、ほとんどのMellotronレコーディングはEmulator IIでのサンプルと思われます。 また、最近のライヴなどでは、ラック音源を使用している様子です。

2007年6月24日
淡海悟郎 関連
「淡海悟郎&ビッグマウス with 大魔道管弦楽団/GUIN SAGA 〜戦乱篇〜」(1985年 JAPAN/画像左)

 栗本薫のファンタジー小説をイメージアルバム化した作品。 1970年代からミノタウロス等のグループを率い活動していた淡海悟郎ですが、80年代の作品と言えばこの「グイン・サーガ」シリーズが有名でしょう。 EL&Pに触発されてプログレッシヴロックを志したというだけあって、いわゆるオルガンロックをベースにした楽曲と、このアルバムではオーケストラ主導のシンフォニック作品を交互に並べています。 全体的にはいわゆるサントラらしい雄大な曲調が並びますが、4曲目「クリスタルの反乱 II」ではシタールを含む中近東テイストのロックに、NOVATRONストリングスとクワイアが加わり、おどろおどろしいムードで一杯になります。 アルバム最後の「レムス戴冠」にもNOVATRONクワイアが使用されている様に聴こえます。 一連のシリーズには、他にもNOVATRONを使用した作品があります。

「奥則夫/魂のカンツォーネ Norio e Canzone」(1975年 JAPAN/画像右)

 奥則夫は、「NHKのど自慢コンクール」の歌謡曲部門で全国1位になったのをきっかけにプロ歌手としてスタートし、ほどなくカンツォーネに出会い、イタリア人神父にその素質を認められ、本場でのカンツォーネ修行後にこの1stアルバムをリリースとの事。 本作の音楽監督を淡海悟郎が担当し、淡海悟郎とミクロコスモスとして演奏しています。 奥氏から信頼を置かれ、自由な音作りを任されたという内容は結構Mellotronが使われていて、このミスマッチ加減がMellotronマニアをくすぐります。 「Betty Blue」では、ストリングアンサンブルで流しているといきなりMellotron Choirが出てきてびっくり。 女声合唱団もクレジットされていますが、この無気味なChoirは明らかにMellotronです。 「Addio Il Mio Sognio」でもコーラスが聴こえますが、これはMellotron Choirと生の女声コーラスをミックスしたものだと思われます。 また中盤にはシンセとユニゾンで演奏したMelloton Choirの早いフレーズも出てきて、歌モノ作品に似つかわしくないマニアックさにニヤリとさせられます。 「Kyrie」ではワウギターの活躍する妙にサイケなバッキングへ、こっそりMellotron Celloが登場。 「Un Triste Pagliaccio」ではMellotron Fluteがリズムをとり、アルバム最後の「Ave Maria On The Street」では、流麗なバッキングに独特のMellotron Celloが顔を出します。 最後の最後、生の女声コーラスを後ろで支えるのはまたもやMellotron Choirです。 生のコーラスと一緒に使われるのは比較的珍しいのではないでしょうか?

2007年6月24日
斉藤哲夫
「斉藤哲夫/グッド・タイム・ミュージック」(1974年 JAPAN/画像左)

 「悩み多き者よ」では若きフォーク哲学者、「いまのキミはピカピカに光って」ではCMソングで一世風靡、その他は不当に評価の低いシンガーソングライター斉藤哲夫の3rdアルバム。 チト河内グループ、白井良明、山下達郎らがバックを固めていて、編曲を手掛ける瀬尾一三がMellotronを弾いています。 アルバム冒頭の爽快な「どうぞよろしく」で幕を開け、続く「MR.幻某氏」では、MATCHING MOLE「O Caroline」級の艶かしいMellotron Fluteを、テープアタック音と共に聴く事が出来ます。 曲が盛り上がって来ると、生ストリングスにMellotron Celloの独特な低音部も加わり、大満足。 Mellotron Fluteの囁きに乗ったままエンディングになります。

「斉藤哲夫/DE TE FABULA」(1992年 JAPAN/画像右)

 1980年の「いつもミュージック」以来12年ぶりとなったオリジナルフルアルバム。 起伏のある豊かなメロディと、キラキラと生命力溢れるアレンジの変わらぬテンションは感動的です。 参加メンバーの中に意外にも永井ルイの名前を見つけて、また驚いてみたり...。 収録曲「SHE'S A BIRD」には、斎和重のクレジットでMellotronがあり、バックでFluteらしき音がこっそり鳴っていて、最後は苺畑風にリズムを刻んでエンディングとなります。 日本のロックアルバムとして高水準にある作品群は、再認識の価値ありです、是非聴いてみてください。

2007年6月24日
島田荘司
「シマダソウジ/LONELY MEN」(1976年 JAPAN)

 島田荘司さんが小説家としてデビューする前、1976年にシマダソウジ名義で残した作品。 ジャケットには「SINGER SONG ILLUSTRATER」とユニークな表記があります。
島田さんは、ウエストコースト風のロックサウンドに乗せ、浜田省吾ばりの骨太な声で歌い、Mellotronまで弾いています。 「熱い季節」「街を呪うこともなく」「青春の頃」「地下鉄のカベに」Mellotron Choirが使用されていますが、どの曲も登場部分が少ない上に驚く程音量が小さい! Mellotronが鳴ったと思った瞬間、もう終り? みたいな感じなので、ここは素直に楽曲を鑑賞する事にしましょう。

2007年6月23日
ROSALIA
「ROZALIA/Zillion Tears」(1990年 JAPAN)

 「ドラマティックな少女の気持ち。 美少女ロッカーズ ロザリア デビューアルバム!」の帯コピーも眩しい、キーボーディスト三浦奈緒美率いるROZALIAのデビューアルバム。 全4曲共にMellotron 3Violinsが使用され、それらしい雰囲気はあるのですが、ビジュアル共々過剰演出された全体像は少女マンガ的(ゴスロリの源流?)で、かなり残念。 プログレの看板を掲げ、当時全盛だったプリンセス・プリンセス的アイドル歌謡をやるのと、歌謡曲の看板を掲げてプログレ並に凝った曲を聴かせるとしたら、後者の方がもう少し評価出来たかもしれません。 いずれにせよ、1音鳴っただけで「プログレ?」と錯覚させるMellotronの威力が凄いことには変わりありませんが.....じゃあプログレって何だろう?

2007年6月23日
あんぜんバンドのふしぎなたび
「あんぜんバンド/あんぜんバンドのふしぎなたび」(1976年 JAPAN)

 はっぴいえんどでおなじみ、矢吹伸彦さんのカバーイラストが印象的な2ndアルバム。 浦和ロックンロールセンター(URC)を拠点に活動していた彼らは、レコードデビューする少し前に、キーボード、サックスの中村哲、ギターの相沢邦をメンバーに加え、その音楽性を広げて行きました。 音の方は、PINKFLOYD等の影響を受けたスタイルで、メンバーの交流もあった四人囃子との共通性も感じられます。 印象的な日本語歌詞と、その行間を膨らませるような独特の音空間で、1970年代の日本の情景を巧みに切り取った名作。 様々なキーボードを操る中村哲のクレジットにはMellotronもあり、「偉大なる可能性」に壮大なMellotron 3Violinsを登場させ、アルバムラストを飾っています。

2007年6月23日
IDLE RACE
「IDLE RACE/The best of IDLE RACE featuring Jeff Lynne」(1990年 UK)

 Jeff LynneがMOVE加入の為に脱退するまでのアルバム2枚「The Birthday Party」(1968年)、「Idle Race」(1969年)とシングル3枚を編集したベスト盤。 60年代末期の空気を演出するのはもちろんMellotronで、1stアルバム「The Birthday Party」から収録された5曲にMellotronが使用されています。 「Morning Sunshine」では、なんとも可愛いらしいMellotron Fluteが顔を出し、「The Skeleton and The Roundabout」では、おもちゃ箱をひっくり返したような楽曲をMellotron Brassが彩ります。 「Lucky Man」でもMellotron Brassが楽しい楽曲を盛り上げていて、更にビブラートの掛かった妙な演奏のVibraphoneも聴こえてきますが、これもMellotronだったりしたら嬉しいねぇ。 「I Like My Toys」では、途中に味のあるMellotron Fluteソロが登場して、甘酸っぱいポップ度が急上昇。 「The Lady Who Said She Could Fly」でも、生のストリングスに混じり、Mellotron Fluteが使用されているように聴こえます。 当時はヒットに恵まれなかったそうですが、親しみやすいポップなメロディと、カラフルな演奏が狂おしい程に魅力的な内容は、Jeff Lynneの音楽性が現在まで一貫している事を良く理解させてくれます。

2007年6月22日
Peter Banks
「FLASH/Out Of Our Hands」(1973年 UK/画像左)

 YES脱退後、Peter Banksが結成したリーダーグループの3作目最終作。 初期YESをハードにしてジャズテイストを加えた作風は、併走する本家YESとの類似点も指摘出来るかと思いますが、言い換えれば、YESのYESたる基本形はこのPeter Banksが作り出したのだと再認識出来ます。 YES時代からの溌溂としたギターの魅力は変わらず、更に様々な奏法を試みており、楽曲構成の複雑さも相まって聴き応えのある作品になっています。 専属のボーカルを置いた4ピースバンドで、キーボードはベースのRay BennettとPeter Banksが兼任していて、Ray Bennettが「None The Wiser -King-」にMellotronストリングス、「The Bishop」にMellotron Fluteを演奏しています。 気味の悪いHipgnosisのカバーデザインと「死霊の国」なんて付けられた邦題は、完全なイメージダウン。 地味ながらもかなり良いアルバムなのだが...。

「EMPIRE/MARK II」(1977年 UK/画像右)

 FLASH解散後、1977年にロサンジェルスでレコーディングされたEMPIREの2ndアルバム。 全3作を残すも、ボーカルの紅一点Sydney Foxxを除くメンバーは流動的で、ライヴも無かったと言われています。 Peter Banks再評価の気運に乗って、1996年に発掘音源としてリリースされました。 初期YESやFLASHと音楽性に大きな変化は無く、ある意味ワンパターンではあるのですが、アメリカ指向の明るいアレンジと勢いのあるPeterのギターは魅力的です。 次作で完全露呈するAOR色が徐々に出始めていながらも、強いプログレテイストが残る作風は個性的で聴き応えがあります。 1曲目「Still Out Of Our Hands」から、疾走するMellotronストリングスが登場し、2曲目「Destiny」でも幻想的なMellotronストリングスが続きます。 続く「Sky At Night」「Do What you Want」ではSteve Howeに負けじと様々なギターフレーズ披露し、Mellotron Flute、ストリングスが重なります。 アルバム最後のムーディーな大曲にもMellotronストリングスが登場し、アルバム全曲に渡ってMellotronを使用している事がわかります。 キーボードにはRobert Orellana、Jakob Freman Magnussonのクレジットがあります。

2007年6月20日
シュリークス
「シュリークス/イルカのうた」(1974年 JAPAN)

 アマチュア時代には山田パンダらも在籍していたというフォークグループ、シュリークス。 デュオ(イルカとカメ吉こと御主人の神部和夫)となり、デビューから2作目となるこの作品では、既にイルカのソロデビューを視野に入れて制作されたようです。 サウンドメイキングを主導したのは石川鷹彦さんで、全13曲中7曲もMellotronを導入する、隠れMellotronアルバムです。 1曲目、吉田拓郎の作曲になる「クジラのスーさん空をゆく」から、のんきな曲調に不釣り合いなMellotron Choirが出てきて驚かされます。 続く「とんがらし」でも、ボーカルに寄り添う様にMellotron Fluteがたっぷり使われていてたまりません。 「杉の木山」ではマンドリンに合わせ、Mellotron 3Violinsがなんとも切ない雰囲気。 「2001年ぼくの部屋」では、ボリュームペダルとエフェクトで繊細なMellotron 3Violinsが登場したと思えば、サビにFluteも重なりそのままソロで締める名演。 爽やかでありながら、Mellotron濃度は高まる一方です。 「いつか冷たい雨が」では、ピアノ伴奏のスローな曲にMellotron 3Violinsが登場し、グリッサンドからソロまで披露する大盤振舞い。 「ひとりごと」ではMellotron Cello独特の低音に始まり、すぐさま3Violinsが重なる豪華仕様で、生ギターとの絡みが良い味のイタリアンプログレを思わせる名演には唸らされます。 もし、このアルバム制作にもっと予算があったら、Mellotronは生ストリングスに置き換わっていたかもしれません。 そう考えると、なんとも不思議な気持ちです。

2007年6月20日
教授もトロン
「りりィ/AUROILA -SO LONG-」(1976年 JAPAN)

 バックはおなじみBy-By Session Band。 キーボードの坂本龍一は使用楽器も多く、Piano、Fender Rhodes、Organ、Arp Odyssey、Clavinet、Roland Synthesizer、Mellotron Gloken、Tubular Bellsとクレジットされています。 MellotronとGlokenの間に、(句読点)が無いので、まさかMellotronのGlockenspiel音源なのか? 教授が作曲したアルバムラスト「オーロイラ(So Long)」では、ピアノの逆回転サウンドに始まり、延々とMellotron Choirが流れるシリアスでスケールの大きな曲。 曲が進むにつれてMellotronの音量が上がり、楽曲のイメージを決定する重要な役目を果たしています。 教授は加藤和彦「Belle Excentrique」でChamberlinを弾いていますが、Mellotronを弾いているのは珍しいのではないでしょうか。

2007年6月20日
深町純 関連
「遠藤賢司/KENJI」(1974年 JAPAN/画像左)

 ジャケットは横尾忠則、そして細野晴臣、林立夫、深町純、星勝、山内哲ら、蒼々たるメンバーがバックを固めた、遠藤賢司1974年の4thスタジオアルバム。 シングルで先行発売となっていたオープニングナンバー「踊ろよベイビー」は、高中正義のアレンジしたアップテンポな作品。 小刻みなギターカッティングと、ノリの良いClavinetで順調に飛ばしていると、突然ド派手なMellotron 3Violinsが出てきて、ほどなくMellotron Choirも重なり「Oh baby 君の宇宙の果てまで」という歌詞と共に宇宙へ飛んで行ってしまいます。 Mellotronはそのままエンディングまで鳴りっぱなし。

「小椋佳/残された憧憬〜落書〜」(1974年 JAPAN/画像右)

 大ヒットとなった「白い一日」を含む、1974年のアルバム。 こちらも細野晴臣、林立夫、安田裕美、深町純、矢野誠、高中正義、井上陽水ら、豪華なメンバーがバックを固めています。 「落書」という小曲をブリッジにして組曲形式に繋がれたこのアルバムは、明らかにKING CRIMSON「宮殿」「ポセイドン」の影響下にあり、いかにもと言ったドラムやギター、ストリングスの劇的なアレンジに驚かされます。 アレンジャーは星勝さんで、A面ラスト「飛べない蝙蝠」ではついにMellotron 3Violinsの嵐となり、KING CRIMSONをバックに小椋佳が歌うという凄まじい構図が前面に出てきます。 中盤「野ざらしの駐車場」のエンディングにもMellotronストリングスが遠くで鳴っているように聴こえます。 そしてB面ラスト「落書 VIII」では、Mellotron 3Violins、Choirが流れる中、収録曲がフラッシュバックするまさしくKING CRIMSON「The Devil's Triangle」的アレンジになり、興奮状態のままエンディングを迎えます。

2007年6月19日
マジカルパワー
「Magical Power Mako/MAGICAL POWER」(1974年 JAPAN)

 日本宅録界の始祖、言わずと知れたマジカルパワーマコの1stアルバム。 1973年10月から12月にかけてレコーディングされ、日本において売り出し中だった新鋭楽器Mellotron M400Sが早速使用されています。 「朝の窓をあける、太陽が光る、今日の希望だ小鳥がなく」「アメリカン・ヴィレッヂ1973」「空を見上げよう」には、ふんだんにMellotron 3Violins、Choirが使用されています。 「アメリカン・・」は記憶を回想するような不思議なサウンドコラージュ、他の2曲はタイトルの通り開放的な曲で、両極端なイメージをMellotronの正統的な演奏と効果音的な音の断片で彩っています。 当時、Choirサウンドが出せる唯一の楽器であったことや、その機械的、無機的な出音の面白さに彼の興味が向いていたのではないでしょうか、演奏の端々にそんな印象を持ちました。 自由奔放な作品の中にありながら、曲らしい曲のメイン楽器を担うMellotronではあったのですが、「空を見上げよう」の自らの解説には「メロトロンは面白い楽器です。 もう二度と使いません。」とあります。 このコメントの意図するところは一体何だったのでしょうか。

2007年6月19日
たった一度の過ち
「THE NICE/AUTUMN'67-SPRING'68」(1972年 UK)

 言わずと知れたKeith Emersonが在籍するNICEの、人気曲とアルバム未収録曲を集めたコンピレーションアルバム。 問題はシングル「America」のB面に収録された「Diamond Hard Blue Apples of The Moon」(1968年 邦題:輝ける月)で、EL&P「Abaddon's Bolero」(1972年 邦題:奈落のボレロ)でのMellotron使用疑惑を除いては、唯一明確なMellotronプレイと言えます。 曲の方は1968年という時期から想像できる通り、同時期のZOMBIESやKINKSと同様カラフルなサイケデリックポップで、豪快なオルガンプレイに負けない大音量でMellotronストリングスが登場します。 もちろんMellotron MARK IIのストリングスでしょう、その音の深みと糖度の高さは一級品です。 Keithはその後、MOOGシンセサイザーという新兵器を手に入れて、こんなアナクロ楽器Mellotronには目を向ける事はありませんでした。 派手好きな彼は、少し悲しげなMellotronサウンドがあまりお好きではなかったようです。

2007年6月16日
ジェネシスかチェンバーか・・・
「THE WATCH/VACUUM」(2004年 ITALY/画像左)

 THE NIGHT WATCHを前身とする完全なるGENESISクローンバンド。 100人中100人がGENESISソックリだと言い切れる出来映えは、Simone RossettiのGabriel唱法に始まり、Sergio Taglioniが奏でるMellotronの嵐にYAMAHA CPのさざ波、上品なソロシンセや重厚なHAMMOND、Ettore SalatiのHackettギター等、完璧に条件が揃っています。 この手のフォロワーを聴くと、騙されないぞと身構える私ですが、これなら騙されてもいいかなと思う完成度...いやGENESISそのものです。 いかにもTony Banksが好きそうな微妙なコード進行や、Peter Gabrielが好きそうな引っかかりのあるメロディをオリジナルへと完全消化していて、思わず鳥肌が立つ場面が何度もやってきます。 Mellotronはサンプルですが、出るべき所に劇的に登場し決して期待を裏切る事はありません。 また、Robert Leoniのスプラッシュシンバルを多用する軽快なドラムが、カビ臭くなりがちなGENESISスタイルを新鮮に仕立てる事に成功しています。 現在はキーボーディストがFabio Mancini変わり、Mellotronも本物を導入し新譜を発表したばかりです。

「YUGEN/Labirinto d'acqua」(2006年 ITALY/画像右)

 元THE NIGHT WATCHのギタリストFrancesco Zagoらが中心となった、室内楽とロックの融合を試みる総勢14名のミュージシャンが名を連ねるプロジェクト。 Francescoは大学の哲学科を卒業し、ミラノの音楽学校でアコースティックギターを勉強した人物だそうで、アルバムにはなんとも知的なムードが漂います。 完璧なスコアを元に構築されたであろうこのチェンバーロックは、畳み掛けるような隙の無い演奏に加わるMellotronの隠し味で、往年のイタリアンプログレをも彷佛とさせる力作です。 イタリア在住のMellotronエンスージャストRyo Sekine氏がレコーディングに協力しており、楽曲のあちこちからMellotronの様々な音が聴こえてきます。 特に面白いのは「brachilogia」の冒頭、Mellotron Male Solo Voiceで幕を開けるところだったり、Sekine氏所有の特注
Skellotron #003がそのまま曲のタイトルとなった「skellotron 003」では、そのSkellotronを使い荘厳な多重録音を聴かせてくれるところでしょう。 2人のキーボーディストの内、Mellotronを担当するのはPaolo Botta。

情報提供 Ryo Sekine氏

2007年6月16日
オンド・マルトノ+メロトロン
「ハラダ タカシ(原田節)/金のうさぎ UN LAPIN D'OR」(2004年 JAPAN)

 名古屋の「家庭創作料理 李月」を経営するかたわら「金のうさぎ座」で創作活動を続ける山口絹代(大太鼓)の呼び掛けで、Ondes Martenot奏者の原田節とSaxプレイヤー須川展也を中心に、20世紀に発明されたユニークな電子楽器と伝統楽器の競演を試みた異色作品。 上記の三氏に加え、Mellotron赤城忠治、Stylophone坪内浩文、Khoomii(ホーミー)遠藤正一郎、Cello三宅進、Piano加藤千晶という蒼々たるメンバーで、長久手文化の家 森のホールに於けるコンサート「星たちの夜 ハラダ タカシ、オンドマルトノ演奏会with須川展也、サクソフォン そして響きあう仲間たち」(2004年6月4日)で世界初演となった楽曲のスタジオ録音盤。 和太鼓の重低音に始まり、Ondes Martenotが第一声を上げ、続くホーミーの野性味でイメージは日本からモンゴルの平原へ飛んで行きます。 その後Mellotron Fluteの中華風メロディで場面転換しながら中国大陸を西に進み、StylophoneやOndes Martenotに加えMellotronストリングスで曇り空のヨーロッパまで移動します。 そしてSax、Pianoに和太鼓、ホーミー、Mellotron、Ondes Martenot、Stylophoneが重なり上昇しながら大団円を迎えます。 無国籍で平和的な旋律は美しく、7分20秒で一気に時空を移動する感覚は大変爽快です。

(画像左/ハラダ チエさんデザインのCDジャケット)
(画像右/イラストの中には素敵なMellotronも並んでいます)

資料提供
金のうさぎ座 遠藤正一郎氏

2007年6月15日
○○タイプ
「RUSH/Snakes & Arrows」(2007年 CANADA/画像左)

 「ZEPフォロワー」として登場した彼らも、今では「RUSHタイプ」と形容すれば誰もがアノ音を想像出来る程のお家芸を完成させ、数多くのフォロワーを生む先駆者となりました。 5年ぶりのオリジナルアルバムとなる本作は、90年前後のストレートなポップ路線から離れ、濃密で重量感溢れる音がグルーヴするハードロックへ回帰をしたようです。 レコーディングに使用したニューヨークのAllaire Studioには偶然にもMellotronが備えてあり、Geddy Leeは収録曲「Faithless」「Good News First」に、Mellotronストリングスを演奏しています。 どちらの曲も(当然ですが)Alex Lifesonのギターが大きくフィーチャーされていて、Mellotronはよほど注意しないと聴き取れないレベルです。 日本盤ライナーには「Geddy Leeが長年封印してきたMellotronをフィーチャーしたことも大きい」との記述で、これがプログレ寄りの作品を生み出したとありますが、それは少し大げさでしょう。 1976年のアルバム「2112」で壮大なMellotronを演奏し、ジャケットデザインまでも手掛けたHugh Symeは、本作のアートワークも担当しています。

「DREAM THEATER/International Fanclub CD 1997」(1997年 USA/画像右)

 「RUSHタイプ」もしくは「YESタイプ」と言われてきた彼らも、今では「DREAM THEATERタイプ」という形容詞がそれらの音楽を指す定番文句になるまでになりました。 2代目キーボーディストDerek Sherinian唯一の参加アルバムとなった、4thアルバム「Falling Into Infinity」では、収録曲「Peruvian Skies」「Anna Lee」にMellotronサウンドを使用しています。 ファンクラブのみで販売されるCDの1997年版は、同アルバムのメイキング音源を事細かく収めていて、オリジナルアルバムでは聴き取り難かったMellotronサウンドも、はっきりとサンプルである事がわかります。 Mellotronフルートからストリングスに切り替えたり、フレーズを練習したり、Derekの試行錯誤が楽しめる貴重な音源です。 RUSHのNeil Peartはこんな無機的にツーバスを踏んだりしないし、YESのアンサンブルは複雑に聴こえるがそれほど手数が多く無い、そんな比較が私のイメージするDTタイプ。

DREAM THEATER資料提供 agito氏

2007年5月31日
アルバム未収録シングル
「Enzo Stavolo/Fiaba Popolare」(1978年 ITALY/画像左)

 アルバム未収録シングルである本作の他にもう1枚のシングルがあり、そちらはアルバムからのシングルカットとなっています。 いかにもカンタウトーレといった内容は、明るく溌溂とした上昇気流で聴き手を高揚させる力があります。 曲の冒頭からMellotron FluteとMellotron Choirが囁きかけ、アコースティックギターのアルペジオに乗って歌が始まります。 その後、厚い生ストリングス、ピアノに混じりながらもMellotronが流れ続けます。 巧みなコーラスワークとそれを支えるようなMellotron Choirは、陽光に向かって昇天するかのような美しさです。 Choirの音源を使っていますので、Mellotron M400Sでのレコーディングと思われます。

「ALEPH/Little Games」(1977年 AUSTRALIA/画像中)

 オーストラリア、ツインキーボードバンドのアルバム未収録シングル。 YES「DRAMA」のオープニングナンバー「Machine Messiah」によく似た印象(こちらが先!)で、ポップでカラリと乾いた軽快な曲です。 きらびやかなピアノとシンセ、そして派手なギターワークの合間を縫って、Mellotronストリングスが良い塩梅で湿り気を与えています。 B面「Of The Essence」でも、弾きまくるピアノ、オルガンとギターにグイグイ引っぱられて曲は進み、最もシリアスなメインテーマをMellotronストリングスが色付け、曲のカラーを決定しています。 同時期の傑作アルバム「Surface Tention」との落差は一切無く、豪華で分厚い音のALEPH節をタップリと満喫する事が出来ます。

「YEZDA URFA/She's Got Tarter on Her Teeth」(1975年 USA/画像右)

 幻の1stアルバムと言われた「Boris」と同時期の未発表曲で、後にアルバムがCD化される前に、オフィシャルサイトで発表されたものです。(ジャケットは「Boris」) 一般的にGENTLE GIANTとYESを組み合わせた様なと形容される彼らですが、この曲もその例外では無く、凄まじい転調に加えて窒息しそうなMellotron濃度でゴリ押しして行きます。 曲は、Mellotron 3Violinsの不穏な空気で始まり、メインのリフまでも凶暴なMellotronで演奏しています。 まるで耕耘機でMellotronの鍵盤を引っ掻き回しているようなけたたましさは、洗練という言葉の存在すら忘れてしまいそうですが、終盤は美しいメロディを奏でホッとする場面もあったりと、一筋縄ではいかない展開になっています。 キーボードは「Boris」と同様、Phil Kimbroughでしょうか。 この曲の他にMellotronを使用しているものは無いようですが、1975年の彼らのステージ写真にOrchestronを見つける事ができますので、当サイト的にはまだまだ研究の余地はありそうです。

資料提供 yes.t氏

2007年5月22日
ジャケットからMellotronなレコード
「P.F.M./Per Un Amico」(1972年 ITALY/画像左)

 オリジナルジャケット内側が外側になっているベネズエラ盤、ディフジャケ。 Mellotron MARK IIが大写しになっている珍しいものですが、内容は後の英語バージョン「Photos Of Ghosts」の原型となる母国イタリア語版と同じです。 ラフで素朴な印象ですが、上昇気流を捕まえる瞬間の勢いときらめきは、こちらの方が上かもしれません。 アルバムトップの「Appena un poco」から大地を揺るがすようなMellotron MARK IIのストリングスが登場し、楽曲の素晴らしさと共にP.F.M.の格の違いを感じさせます。 キーボードはもちろん、Flavio Premoli。

「稲田保雄とベミ・ファミリー/感覚思考」(1974年 JAPAN/画像中)

 クラシック畑のキーボーディストとの事ですが、YAMAHA LM(ライトミュージック)SCHOOL創設に尽力し、現在もヤマハでロックキーボードの講師をされていらっしゃるので、早い段階からロック指向があったのだと思われます。 自身のキーボードに加え、ドラムに藤井章司(スモーキー・メディスン、一風堂、他)、ギターに現在ギタークラフトマン(SS GUITAR)として有名な志村昭三を迎えたトリオ編成で、A面はドビュッシー「水に映る影」、B面はベートーベン「悲愴」をモチーフにした長尺作品となっています。 まず驚かされるのはその流麗なピアノ演奏で、もはやロックキーボードの範疇ではありません。 それに加わるHAMMOND B3、ARP、MOOG、Mellotronは、プログレッシヴロックの自由さと豪快さを併せ持っていて、センス、完成度共に国内最高峰と言って良いでしょう。 プログレ先人達の影響を感じさせない実験色の強い作品ですが、陰りの無い上品な作風はどことなくイタリアンロックを想起させます。 HAMMONDの轟音と唸るMOOGに加え、然るべき所に最大限使用されるMellotron Choirは、マニアの期待を裏切る事はないでしょう。

(画像右/ジャケット裏側、手前にFender Rhodes、MINI Moog、ARP Odyssey、奥に白いMellotron M400S)

2007年5月18日
ジャケットからMellotronなCD
「Patrick Moraz/Future Memories I and II」(2007年 SWITZERLAND/画像左)

 地元スイスのテレビパフォーマンスを収めた2作「Future Memories I」(1979年)「Future Memories II」(1984年)からの選曲に、未発表曲「Search」を加えた変則ベスト盤。 ジャケット写真には、YESやMOODY BLUES時代にも使われた、黒いMellotron MARK Vが写っています。 匡体を補強する側面のリベットが、良くわかる珍しいショットです。 3曲目「Metamorphoses,Mvts II&III」では、ビリビリしびれるようなMellotron Cello独特のサウンドと、分厚いMellotronストリングスを楽しむ事が出来ます。

「V.A./テクノ歌謡 テイチク編 ラヴリー・シンギング・サーキット」(1999年 JAPAN/画像右)

 一大ムーブメントとなったテクノ歌謡コンピレーションのテイチク編。 ジャケットの裏には、テクノというよりは昭和レトロなカップルと、何故かテイチクのマークを貼付けられた、Mellotron Archives David Keanさんの白いMellotron M400S#245が! SHI-SHONENをはじめとする胸キュンポップな収録曲には、もちろんMellotronの使用はありませんよ(笑) 相変わらず、フォトジェニックなMellotronさんでした。

(画像中/ジャケット内側、Patrickの5角形!キーボードブース右手には黒いMellotron MARK V)

2007年4月18日
J-PROG日本市場での戦い
「PANGAEA/unu」(2004年 JAPAN/画像左)

 厚見玲衣プロデュース、北岡絵里歌、大杉尚史の2人組ユニットデビューアルバム。 帯には堂々と「プログレッシヴ・ロック再誕・・・」と謳われており、Ian McDonald、沢村拓らをゲストに迎えた本格指向は、その筋のファンが色めき立った話題作です。 J-POPチャート上位を狙える軽快さを持ちながらも、ブリティッシュロック的憂いに満ちた作風は、その看板に偽りありません。 1曲目「Muddy Stream」のド頭からMellotron 3Violins、Celloで始まり、Ian McDonaldのフルート、Steve Hackettを思わせる沢村さんのリリカルなギターで、一切手抜かり無し。 12分を超える「Fixed Star」では、壮大なMellotron 3Violins(アウトロにMellotron Celloも加わるエンディングは聴きもの!)をメインに、Mellotron Flute、イントロではMellotron Boy's Choir、BメロにMellotron Male Choir音源も確認する事が出来ます。 24分に渡るアルバム後半の組曲「閉じられた本」の「mr.dead night」では、Mellotron 3Violins、Mellotron 8Voice ChoirとMellotron Russian Choirが加わり、強烈な退廃的世界を作っています。 Mellotronは音色の選択にこだわり、期待される箇所に最大限に使用されていますが、曲によってシンセストリングスや生のバイオリンを使いわけるバランス感覚は、流石と言うより他はありません。 かなりポップな「Mirror」「Shining Vectors」など、テレビやラジオで流れる事を期待していましたが、この作品のみで解散してしまったのは大変残念です。

「TorN/葵-Cerulean-」(2007年 JAPAN/画像右)

 ディスクユニオンArcangeloレーベルからの1stシングル。 女性ボーカルのハードロックをベースにゴシック、ゴスペルテイストを加味したスタイルは、日本版EVANESCENCEと言ったらいいでしょうか。 1曲目「葵-Cerulean-」から、M-Tronストリングス(クレジットは「Tron」)が、これでもかと鳴りっぱなし。 2曲目「Somebody Like Me」では、曲中のM-Tronストリングスはもちろん、イントロでは(Mellotron MARK IIでお馴染み)Bossa Nova/Cello and Violin Moving音源の、右鍵盤音が繰り返されているのが面白いです。 初回特典CD-R「ANOTHER TorN vol.1」収録の1曲目「醜話〜The ugly story〜」にもバックにM-Tronストリングスが隠し味で鳴っています。 そしてMellotronファンお目当ての3曲目「葵(Tron of Flood Version)」では、冒頭からM-Tronの嵐で、相当音を重ねている様子が伺えます。 劇的な曲調にMellotronサウンドは良くマッチしていて、これがテレビやラジオから聴こえたら、思わずドキッとしてしまうでしょう。 しかし、Mellotronサウンドを売りとしているだけに、生音のM-Tronサウンドに軽さを感じるのが惜しいところです。

PANGAEAの使用楽器詳細は厚見玲衣氏にアドバイスいただきました。

2007年4月16日
星空のピアニスト
「Richard Clayderman/Richard Clayderman」(1978年 FRANCE/画像左)

 ピアノの貴公子、イージーリスニングの若きプリンス、オバハンのアイドル...言い過ぎました(反省) 大ヒット曲「渚のアデリーヌ」(Ballade Pour Adeline)収録のデビュー作。 以前から意外なMellotronユーザーとして有名でしたが、答えはこの1stアルバムにありました。 楽器クレジットには、Piano、Clavecin、Orgue hammond、eminent、elka、Synthesizers Arp、Korg、Moog、Clavinette、Piano Punaise、Melotron(lが一個抜け)とあります。 1曲目「渚のアデリーヌ」のピアノににウットリするのも束の間、2曲目のシンセサイザーで雲行きは怪しくなります。 3曲目「海と子供」(L'enfant Et La Mer)ではついにMellotron Chiorが登場し、世の奥様方の眉間にもシワが寄りはじめます。 4曲目は気を取り直してロマンティックな王道に戻りますが、5曲目「黒い夜」(Black Deal)では、速いシンセシーケンスの上を図太いリードシンセがウネるマニア臭に、気絶した奥様の姿が目に浮かびます。 その上、再び暗黒のMellotron Choirが登場し、倒れた奥様にムチを打つという結果に。 これは、売り方次第ではJean-Michel Jarreになれましたね、マジで。

「リチャード・クレイダーマン・オーケストラ/星空のピアニスト」(1978年 FRANCE/画像右)

 日本盤ジャケ違いで、収録曲は同じです。 ジャケット内側の解説には「自宅にレコード録音も可能なスタジオを持ち、ピアノだけでなく、オルガン、シンセサイザー、クラビネット、メロトロンなど、他のあらゆる鍵盤楽器をこなすクレイダーマン」と解説されています。 5曲目の解説は「新しい感覚のイージー・リスニング・ナンバーを目指して作られた曲かもしれません。 今流行のスペース・サウンド風なシンセサイザーの使い方、非常に面白く印象的だと感じませんか。」とあり、解説者も戸惑いながらリスナーに受け入れるよう促す文脈になっているのが、興味深いです。 3曲目、5曲目の作風で1枚作ってたら、相当重厚なシンセアルバムになっていただろうと、勝手な想像は膨らみます。

2007年4月8日
吉田美奈子
「吉田美奈子/扉の冬」(1973年 JAPAN)

 1973年リリース、ショーボートレーベル第一弾アルバム。 細野晴臣プロデュースで、バックはキャラメル・ママ。 1stシングルにもなった「ねこ」の冒頭、Mellotron 3Violinsの演奏が聴こえます。 キーボードはもちろん松任谷正隆さんですが、クレジットにはMellotronの記述は無し。 曲中は生のストリングスを使用していて、イントロのMellotronは後から付け足した様な印象です。 うーむ、「松任谷正隆モノにMellotron無し」の定説は崩れ去るのか?

2007年4月7日
ザ・セカンド・シティー・サウンド
「THE SECOND CITY SOUND/Tchaikovsky One」(1966年 UK/画像左)

 イギリス出身のギターレスインストグループ。 A面「Tchaikovsky One」は、チャイコフスキーのピアノ協奏曲、B面「Greig One」はグリーグのピアノ協奏曲をシンフォニックなビートアレンジで聴かせていて、イギリスをはじめ、日本でも小ヒットとなったようです。 雑誌の情報をもとに、Mellotronが使用されていると言う噂が当サイト掲示板へ書き込まれた事があり、長年気になっていた作品です。 ジャケットには「世界でもっとも小さなオーケストラ誕生!! イギリスの工業都市バーミンガムの若者4人が作った世界最小のオーケストラ(中略)、12人のヴァイオリン、4人のチェロ、2人のフレンチホルン、ピアノ、ギター、パーカッション、ドラムスそしてティンパニーの24人編成と同じオーケストラの演奏が聞こえてくるのです。」とあります。 それは、Mellotron生誕の地バーミンガム出身で、少人数でオーケストラサウンドを再現するという、Mellotronの宣伝文句のように深読み出来る解説です。 音のほうは、生のストリングス、ピアノ、ドラム、ベースに埋もれて、遠くからMellotronストリングスのような音が聴こえてきます。 1966年にMellotronを使用していたとなると、THE BEATLES「Strawberry Fields Forever」より早い事になります。

「THE SECOND CITY SOUND/Tchaikovsky One」(1967年 UK/画像右)

 上記のシングル2曲に、リストのハンガリアン狂詩曲から「Shopping List」、ビゼーのカルメンから「Lovers Lament」を加えた4曲入り33回転コンパクト盤。 特に「Greig One」「Shopping List」でのストリングスは、Mellotronのそれと似ていて、何十回と連続で聴き直すものの、不明瞭な録音と深いリバーブの底に沈んだ音から判断するのは大変困難です。 しかもTHE SECOND CITY SOUNDでは、シンフォニックなアレンジを再現する為にMellotronを使う事も考えたが、経済的な理由と特殊な構造から使用を断念し、既に所有していた1940年代の電子鍵盤楽器Claviorineを改造して使用したとの文献もあります。 そして、楽曲をアレンジしキーボードを担当するのは、1970年代によく使われる事になる、String KeyboardやSymphonizerなどと呼ばれた、Freeman String machineを開発するKen Freemanその人なのです。 謎は深まるばかりなので、Ken Freeman御本人に伺いました。 「SCS(SECOND CITY SOUND)では、生のストリングスもMellotronも使っていないよ。 ClaviolineとWatkins Echo Boxだけで音を作っているんだ。 Freeman String machineを開発したのはその後になる。」 なるほど、でもあれだけ豊かな音をClavioline(Joe MeekやTHE BEATLES「Baby You're A Richman」の使用で有名)だけで演奏したとは本当に恐れ入ります。 Mellotron抜きではありますが、ヴィンテージキーボードの歴史的資料として、一聴の価値があります。 彼はその後、様々なアーティストのセッション(山口百恵のアルバム「GOLDEN FLIGHT」まで!)に、キーボードやプログラミングで参加したり、コンスタントに作品をリリースして第一線で活躍されています。 1993年リリースのMellotronアルバム「Rime Of The Ancient Sampler」で、ついにMellotronを演奏しているのも興味深い事実です。

情報提供
Ken Freeman

2007年4月3日
トリプルメロトロン
「ANEKDOTEN/Gravity」(2003年 SWEDEN/画像左)

 本格プログレッシヴロック再興の牽引役、ANEKDOTENの4thアルバム。 Mellotronの重量感で押しつぶされそうなほど強烈なANEKDOTENワールドは健在。 本作では、ギターのNicklas BarkerとチェロのAnna Sofi Dahlbergに加えて、ドラムのPeter NordinsにまでもMellotronのクレジットがあり、ついにトリプルメロトロンバンドになってしまいました。 暗黒一辺倒でネガティヴなモチーフをプログレッシヴロックにまとめていた彼らは、相当な決意を持ってバンドを再構築したというだけあり、少しづつ音楽性が変化しているようです。 アルバムトップ「Monolith」のVibraphoneとFarfisaオルガンのカラフルなスパイスや、「War Is Over」でのグルーヴィーなギターアルペジオには驚かされるし、「Ricochet」「Gravity」の終盤、絶妙なコードワークで転調するMellotronサウンドは鳥肌モノの変化球です。 「What Should But Did Not Die」での聴き慣れぬMellotron Solo Violinサウンド、「Seljak」のMellotron Solo Female Voiceなど、あちこちに新鮮な聴きどころをちりばめています。

「ANEKDOTEN/Waking The Dead,Live In Japan 2005」(2005年 SWEDEN/画像右)

 2005年2月25日、26日、周辺には先週の雪が残る鴬谷東京キネマクラブにて行われた、ANEKDOTENの再来日公演。 ステージ左にNOVATRON400、中央にMellotron Mk VI、ドラムセット後ろにMellotron M400Sという、歴代のMellotronが3台並ぶ、恐らく世界初であろう夢のような
セッティングが実現しました。 Jan Erik LiljestromとNicklas Barkerの「コンバンワ、トーキョー!」「Good Evening!」という掛け声で始まり、1曲目「Monolith」から豪快なバンドサウンドとMellotronの猛吹雪で圧倒。 2曲目「From Within」でのMellotronソロでは、Mk VIにセットされた繊細なMellotron Solo Violinが、北欧の凍てつく氷原を想起させます。 このMellotron Solo Violinのテープですが、70年代に録音されながらも、公式にリリースされていない貴重なもので、「Gravity」のMellotronソロでも使用されています。 そしてこのライヴでの最大の焦点は、3台のMellotronによる競演であった事は間違いないでしょう。 「Moon of Mars」(3Mellotrons Improvisation)と名付けられた6曲目、AnnaがNOVATRONでMellotron Clarinet、NicklasがMk VIでMellotron Solo Violinを、PeterがM400SでMellotron Celloを同時演奏する幻想的な瞬間を迎える事になります。 曲の冒頭、NicklasがMk VIの鍵盤を押した直後にハーフスピードスイッチを「LOW」へ切り替える荒技を試み、テープスピードがうねるサイケデリックな効果を出しました。 その後も、Mk VIの調子は上々で、まるでデジタルサンプラーではないかと錯覚するほどの安定感で演目は進みます。 アルバム最後には、お待ちかね「Sad Rain」が収録されていて、その「宮殿」「ポセイドン」に匹敵するMellotronに酔いしれて、ライヴ終了。 ちなみにNOVATRONには[Boy's Choir/Clarinet/Sound FX]、Mk VIは彼らが持参した[3Violins/Solo Violin/Flute]、M400Sには[Flute/3Violins/Cello]のテープがセットされていました。 Mellotronを使えばいいってもんじゃないのは百も承知、使えばこれだけ凄くなるという一例。 溺れるほどMellotronを堪能したい方、全責任を持ってお勧めいたします。

2007年3月23日
鋼鉄のメロトロン
「METAL CHURCH/MASTERPEACE」(1999年 USA/画像左)

 「鋼鉄の聖典」再び・・・という相変わらずなキャッチフレーズの、METAL CHURCH再始動一作目。 Kurdt Vanderhoofのクレジットは「GUITARS、MELLOTRON」という潔いもので、期待度満点。 本作から主導的な立場となったKurdtは、いかにもヘヴィメタル重金属サウンドの隙間を縫って、かなりの量のMellotronをねじ込んできます。 「Falldown」「Sand Kings」ではMellotronストリングス、「Into Dust」でもMellotronストリングスが使われていて、エンディングで急に音量が上がる所などハッとさせられる仕掛けがあります。 「Kiss For The Dead」でもイントロから生ギターと共に大袈裟なMellotronストリングスが登場し、Epitaph級の悲愴感で迫ります。 「They Signed In Blood」にはMellotronクワイアが登場し、エンディングの最高潮にMellotronストリングスも加わります。 サンクスクレジットには、Mellotron Archivesの名前が載っています。

「PRESTO BALLET/Peace Among The Ruins」(2005年 USA/画像右)

 全曲、Mellotron、Chamberlin鳴りっぱなし。 どうやらヴィンテージキーボードマニアらしい、リーダーKurdt Vanderhoofのクレジットには「Guitars、Mellotron、Chamberlin、Hammond Organ、Synthes、Bass、Pedals、Electric Pianos」とある。 私の印象ではDREAM THEATERとMAGELLANに大量のMellotronを加えて、YESとQUEENの華麗さで割ったという感じのプログレッシヴポップ。 出自がヘビメタとは思えないほど曲がポップで、ビールのCMに採用されても良いくらいの爽快なコーラスも平気でこなしています。 Mellotronは大変安定しており、サンプラーと錯覚する位ですが、6曲目の「Sunshine」で結構無茶なピッチベンディングしてみせたりして、生のMellotronをアピールしています。 「The Fringes」「Speed Of Time」の派手なMellotronストリングスソロや、「Find The Time」のハーフスピードMellotronストリングスなど、聴きどころ多く、捨て曲無し! 陰鬱な気分にならないMellotron作品をお探しの方に、是非お勧めいたします。 サンクスクレジットには、Streetly Electronicsの名前が載っています。

2007年3月22日
枯れ木
「FLEETWOOD MAC/Bare Trees」(1972年 UK)

 Christine McVieと、アメリカ人ギタリストBob Welchを迎えての2作目。 ブリティッシュブルースバンドからの転換期で、直球ロック、フォークで進むDanny Kirwan、中性的なボーカルのChristine McVie、カラリと乾いたアメリカンテイストのBob Welchのカラーがミックスされた佳作。 2曲目「The Ghost」でのMellotron Fluteは、ちょっと面白い。 Mellotronは鍵盤楽器ですから、当然鍵盤演奏的に和音で弾いたりするのが自然だと思うのですが、ここには曲の最初から最後までフルート奏者になりきり、単音でMellotronを演奏するChristine McVieがいます。 途中、間奏の終りの切り替えに一箇所だけ和音になる部分があるのですが、Mellotron本来の存在理由を再認識させられる1曲です。 ライナーにも「個性的なフルートのプレイが生きている」と書かれています...フフフッ、Mellotronとバレなかったよ、Christine! 4曲目のインスト「Sunny Side Of Heaven」にも、コーラスが掛かったような幻想的なMellotronストリングスが登場します。

2007年3月20日
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