ARTIST INDEX

■ CDS&RECORDS [7/11]
妖精の森
「AIN SOPH/A Story Of Mysterious Forest」(1980年 JAPAN)

 数少ない、世界レベルのジャパニーズプログレバンド。 カンタベリーテイストの、大変流麗な演奏をするバンドですが、キーボードの服部真誠さんの18種にも及ぶ鍵盤楽器群と、各メンバーの多彩な演奏で、単なるカンタベリー系には収まらない個性を持っています。 「Variations On A Theme By Brian Smith」ではMellotron M400独特のザラザラ、チリチリとしたストリングスが、シンセやエレピの合間に挿入されており、エンディングのアンサンブルもまた格別の聴き応えがあります。 B面の組曲である「A Story Of Mysterious Forest」の中の「Passion」でも、良い音でMellotronストリングスのソロが披露されています。 ジャケット裏に記載されている注意書きには、「The music on this L.P. is not dancing music.」とあり、当時の音楽状況と彼らの立場、そして並々ならぬ決意が理解出来ます。

2003年9月10日
サンジュリアーノ
「SANGIULIANO/Take Off」(1978年 ITALY)

 イタリアのソロキーボーディストAntonio Sangiulianoのフルアルバム。 Moog各種、ARP各種、Mellotron、Clavinett、Harpsichord、Hammond各種、Steinway Piano等々、膨大な鍵盤楽器を多重録音した、まさに「怒濤」のシンフォニックワールド。 収録曲3曲すべてに、派手な演奏でMellotronが使用されています。 アルバムA面を費やした「Time Control」は、脅迫的なMellotronクワイアのアンサンブルに導かれ、クラシカル且つストイックに展開していきます。 「Saffo's Gardens」でもMellotronクワイアが使用され、Poly Moog等のリード楽器と共に、楽曲の重要なカラーを表現しています。 「Take Off」ではMellotronクワイアに加えて、Mellotronストリングスも使用した、ある意味Mellotron地獄。 ゲストドラマーの参加があり、いかにもソロアーティスト然とした内省的ムードは無く、ロックのダイナミズムも併せ持っています。 70年代の楽器ながら現代の耳で聴いてもハイテックな印象をうけるのは、楽曲の勢いと演奏の歯切れの良さだけではなく、彼独自のセンスあってのものだと思います。

2003年9月10日
ラッツ・ラーン
「LUTZ RAHN/Solo Trip」(1978年 GERMANY)

 ドイツの叙情派プログレッシブバンド、NOVALISのキーボーディストLutz Rahnのソロアルバム。 初期のリズムボックスであろうシンプルなリズムのDivers Rhythmusmaschinenをベースにした単独旅行記は、多数の鍵盤楽器を一人で多重録音したロマンティックな世界です。 「Galaxy Taxy」はダブルトラックのMellotronフルートがリードをとる大変メロディアスな佳曲、「Minuetta」ではエンディングにMellotronクワイアが使用されています。 その他、Clavinett、Rhodes、Hammond等もセンス良く導入されており、シンプルで品のある作品になっています。

2003年9月10日
アフロディテスチャイルド
「APHRODITE'S CHILD/Impact」(GREECE/画像左)
「APHRODITE'S CHILD/Autografos De Sucesso」(1974年 GREECE/画像右)


 世界的キーボーディストVangelis Papathanassiou、ボーカルDemis Roussosを擁する、サイケポップバンドAPHRODITE'S CHILDのフランス、ブラジルベスト盤。 1stアルバム「End Of The World」、2ndアルバム「It's Five O'Clock」からと、アルバム未収録のシングルから構成されています。 プログレッシヴな内容のアルバム「666」以前のサイケデリックなカラフルさは、Vangelisの多くの鍵盤楽器から生まれています。 その中心となるMellotronの使用は、1968年発表の1stアルバムに集中しており、冒険心溢れる様々な奏法が試みられています。 「You Always Stand In My Way」では、豪快なボーカルに対抗しMellotronブラス、ストリングスで鋭利なフレーズを入れたり、激しくピッチベンドさせたりと弾きまくり、Clavinettのリズムと共に全編暴力的な事この上ありません。 パーカッシブなオルガン演奏のようなフレーズは、Mellotronのテープが切れるのではないかと心配になる程で、他にあまり類を見ないものだと思います。 「Day Of The Fool」は、Mellotronブラスの無気味なピッチベンドで始まり、曲中はMellotronストリングスが派手に使用され、終盤ではMellotronフルートが使用されています。 この曲のMellotronストリングスはテープのクリックもしっかり聴く事が出来ます。 「Mister Thomas」では、ストリートオルガンのようなユニークな演奏のMellotronフルート、ブラスがしっかり自己主張しています。 ヒット曲「Rain And Tears」では、ビブラートの効いた独特のMellotronオルガンがリードします。 深いエフェクトや、コンボオルガンの高音と重なり、聴き取りにくいのですが「End Of The World」でもMellotronストリングス、ブラスが使用されているかも知れません。 Vangelisは、始めからマルチキーボーディストとしての才能が突出していたようで、この音圧は凄まじいものがあります。

2003年9月7日
イーラクレイグ
「EELA CRAIG/One Niter」(1976年 AUSTRIA/画像左)

 3人のキーボーディストを擁する、オーストリアのシンフォニックロックグループの2ndアルバム。 印象的なMellotronブラスの苦い音で幕を開けるアルバム冒頭から、全編様々な鍵盤楽器の音色を堪能出来ます。 アルバムA面の組曲「Circles」では、前述のMellotronブラスのメインテーマに始まり、Mellotronクワイア、ストリングスが巧みに取り込まれており、練り込まれた楽曲は美しい起伏を描いています。 続く「Loner's Rhyme」でもMellotronブラスとストリングスが美しく使用されています。 「One Niter Medley」では、Mellotronオーボエ、クワイア、ストリングスのアンサンブルを軸に曲が展開して行き、アルバムラストの「Way Down」でもMellotronストリングス、ブラスを使用するという、使用頻度の高さです。

「EELA CRAIG/Hats Of Glass」(1978年 AUSTRIA/画像中)

 専任のボーカリストを迎えての3rdアルバム。 クラシカル、シンフォニックな楽曲は変わらず、ボーカル、コーラスパートが強化され、洗練された内容になっています。 前作に比べ、Mellotronが前面に出る事は少なくなりましたが、収録曲「Hats Of Glass」でのMellotronクワイア、「Chances Are」「Heaven Sales」でのMellotronブラスは、サビのバックに使用されるなど、楽曲のキーポイントとして使用されています。 「Holstenwall Fair」では派手なMellotronクワイアに加えて、Mellotronブラスのピッチベンド奏法も披露しています。 3人のキーボード、ギター、ベースに加え、兼任するフルート等も含め、楽器奏者が多いにもかかわらず、各パートの個性が埋没しないアレンジも秀逸です。 キーボードクレジットは、Hubert Bognermayr、Hubert Schnauer、Harald Zuschraderとなっています。

(画像右/白いMellotron M400Sを含む膨大な使用機材と7人のメンバー)

2003年9月7日
Ω
「OMEGA/Omega III」(1974年 HUNGARY/画像左)
「OMEGA/Gammapolis」(1979年 HUNGARY/画像右)


 東欧社会主義国という、ROCK非文化圏でありながら心に残る旋律と熱い演奏で絶大な人気を誇るOMEGA。 3rdアルバム収録の「Spanish Guitar」は凛々しい曲に乗せて、ひたすらMellotronストリングスが流れます。 「Remembering」では、じっくり歌い上げるバックに焼け付くようなMellotronストリングスが流れます。 9thアルバムとなる「Gammapolis」収録の「Hajnal A Varos Felett」でも、深くリバーブをかけたMellotronストリングスを使用しているようです。 英米のロックに比べれば古臭い印象は拭えませんが、正直で素朴なメロディーは大変美しく、ハードロックをベースにした演奏も社会主義の抑圧を打破せんとするエネルギーに満ちており、心を動かされます。
キーボードはBenko Laszloのクレジットになっています。

2003年9月7日
原子心母
「PINK FLOYD/Atom Heart Mother」(1970年 UK)

 邦題「原子心母」を冠し、日本にプログレッシヴ・ロックの存在を知らしめた名作。 Ron Geesinの手によるストリングス、ホーン、コーラスのアレンジが勇壮な、FLOYD作品の中では異色なシンフォニックアルバム。 アルバムA面を占めるタイトルトラック中盤「Mind Your Throats Please」の部分で、生コーラスやオルガンに支えられてMellotronフルートが遠くから聴こえてきてきます。 メインテーマを繰り返した後、Mellotronフルートらしき音の反復をバックに、Mellotronストリングス、ブラスの音片がフラッシュバックし、曲の転換部を強烈に印象づけています。 そしてそのまま緩やかにメインテーマへ収束しエンディングとなります。 Rick Wrightの演奏はオルガンがメインであり、Mellotronは派手な使い方ではありますが、サウンドエフェクトの一部との認識だったようです。

2003年8月22日
BBA
「BECK BOGERT APPICE/Beck Bogert Appice」(1973年 UK/USA)

 Jeff Beckと、元VANILLA FUDGE、CACTUSのTim Bogert、Carmine Appiceのスリーピースバンドで、1969年のJeff Beckの事故により頓挫していた計画が実ったもの。 CACTUSでキーボード弾いていたDuan Hitchingsがゲストで参加しており、収録曲「Oh To Love You」では後半からMellotronストリングスを導入しています。 音源はM400Sの3Violinsでしょうか、高音部がヒリヒリするような独特の音を楽しむことが出来ます。アルバムはBeckのハードなリフと軽快なコーラスワークに加え、ファンクの黒っぽさを加味した、バラエティに富んだ内容になっています。

2003年8月22日
ジュリーとピーナッツ
「沢田研二/Jewel Julie」(1974年 JAPAN/画像左)

 ソロ8作目のアルバムは、気心知れた大野克夫バンドをバックに、本格的なロックへアプローチしています。 大野克夫さんのキーボード、特にMellotronやシンセサイザーの大幅な導入は前作までの「歌謡曲の伴奏」の域を一気に超えています。 アルバムオープニング「お前は魔法使い」からMellotronストリングスを使用、続く「書きかけのメロディー」では全編にゆったりしたMellotronストリングスを流し、間奏ではMellotronチェロを使用しています。 「四月の雪」ではサビのバックにスケールの大きいMellotronストリングスを配して、そのままエンディングに向かって行きます。 「ジュリアン」はKING CRIMSON「Epitaph」中間部と全く同じMellotronフレーズで始まり、硬質なアコースティックギターの音色や、Michael Gilesを思わせるドラムのフレーズ等、アレンジを担当する大野克夫さんを始めとする当時のメンバーの嗜好を伺わせる注目作です。 続く「衣裳」でも大々的にMellotronストリングスとフルートを使用するという、かなりのメロトロン含有量で、欧米のMellotron ROCK名盤に優るとも劣らない勢いを楽しむ事が出来ます。

「ザ・ピーナッツ/愛のゆくえ」(1974年 JAPAN/画像右)

 1975年の解散前年にリリースされたザ・ピーナッツ末期のシングル。 デビューから彼女達と二人三脚で歩んできた宮川泰さんが編曲しており、円熟した歌唱と洋楽テイストを味わえる重厚な作品となっています。 曲の冒頭からMellotron Flute、3Violinsとピアノのアンサンブルに覆われて、これは全くを持ってKING CRIMSON「Epitaph」の日本的解釈。 イントロの最後では、コード弾きに耐え切れずピッチが下がる生々しさ。 途中Mellotron Fluteのソロを挟み、エンディングまでその寒々としたMellotronは活躍します。 バンド演奏はオールスターズ・レオンとなっていますが、Mellotronは宮川泰さんが担当したのでしょうか、大変味わい深い演奏です。

 両アーティスト共に、1974年の作品となっています。 1974年前後から急激に日本のROCK、歌謡曲へのMellotron導入が試みられているのは、輸入代理店やレンタル、リース等の楽器供給側に、なんらかの動きがあったからではないでしょうか。

2003年8月12日
グランドファンク
「GRAND FUNK RAILROAD/Shinin' On」(1974年 USA/画像左)

 ロックアルバム史上初の、3Dジャケットがなんとも派手な10thアルバム。 GRAND FUNKの前身バンドに在籍していたCraig Frostが、前作から正式加入し、ブルースナンバー「Mr.Pretty Boy」で、強烈な印象を残すMellotronストリングスを披露しています。

「GRAND FUNK RAILROAD/Caught In The Act」(1975年 USA/画像中)

 1975年のワールドツアーの模様を収めたライヴアルバム。 ヒット曲を多数含むステージは、観客のテンションも高く演奏も充実しています。 Craig Frostは派手なオルガン演奏に加えて「Closer To Home」の中後半部に、Mellotronストリングスとフルートを大胆に使用し、スケールの大きい曲を盛り上げています。 ヴォーカル、コーラスワークの安程度は文句無し、オルガン、Mellotronワークは華があり、リズム体のキレの良さは抜群。 ただ音量の大きい事が話題のロックバンドでは無いと、再認識。

(画像右/ジャケット写真の1コマには、Mellotronらしきキーボードの姿も)

2003年8月10日
コーダ
「CODA/Saunds of Passion」(1986年 NETHERLANDS)

 プログレ低迷期にリリースされた話題作。 キーボードのErick de Vroomenのソロプロジェクトに、セッションミュージシャンが集められた形になっています。 30分近いタイトルトラックは4部構成になっており「1st Movement」と「4th Movement」はテーマを反復してトータルイメージを作っていますが、その他の部分に明確なメロディの提示は控えめで、本人がライナーでコメントしている通り「白昼夢」や「瞑想」といったキーワードにあてはまる、おぼろげな音像になっています。 しかしながら「Sounds of Passion 1st Movement」「3rd Movement」「4th Movement」で、NOVATRONストリングスとクワイアが使用されており、その他のシンセサウンドと共に大仰なこと、この上ありません。 ボーカルトラックの「Crazy Fool and Dreamer」「Defended」ではNOVATRONフルートとストリングスが使用されており、甘いメロディとシンフォニックな構成が、アルバム終盤を飾っています。

2003年8月10日
アクアフラジーレ
「Acqua Fragile/Mass-Media Stars」(1974年 ITALY)

 P.F.MとClaudio Fabiが前作の1stアルバムに続きプロデュースにあたっている本作は、軽快な楽曲と、コーラスワークの美しいブリティッシュロック寄りの内容になっています。 1stでは本家P.F.M.との類似を避けたのか、ストリングスアンサンブルの使用のみで、Mellotronの導入はありませんでした。 しかし、それでは物足りなかったのか、本作では6曲中4曲にMaurizio Moriの演奏するMellotronを導入しています。
「Cosmic Mind Affair」「Bar Gazing」「Mass-Media Stars」「Coffee Song」で、美しいMellotronストリングスを聴くことが出来ます。 楽曲から聴いてとれる、GENESISやYESへのストレートな愛情表現は、P.F.M.の気持ちを代弁しているようで興味深く、ヴォーカルのBernardo LanzettiがP.F.M.に引き抜かれて解散するという「一心同体」ぶりも納得できます。

2003年8月9日
N.T, Atomic System
「NEW TROLLS/Atomic System」(1973年 ITALY)

 前作「UT」発表後、メンバー間の意見の相違による、バンド分裂中に発表された6thアルバム。 それまでのアルバムにMellotronの導入は見当たらないようですが、分裂中の本作に参加するキーボーディストRenato Rossetは、リーダーでキーボードのVittorio De Scalziの合間を縫って、Mellotronを使用しています。 「La Nuova Predica Di Padre O'Brien」「Quand L'Erba Vestiva La Terra」では、Mellotronチェロのベースラインが独特の色合いを出しています。 「Tornare A Credere」の中間部ではMellotronブラスの美しいリードを聴くことが出来ます。 「Iberzione」「Butterfly」では、Mellotronブラス、ストリングスの隠し味が、オルガンやピアノを引き立てています。 バンドの分裂というネガティブなエネルギーが、楽曲の完成度と反比例する好例は、非クラシカルな、演奏者一丸の骨太なロックアルバムに昇華しています。

2003年8月9日
ニルソン
「Nilsson/Nilsson Schmilsson」(1971年 USA)

 BADFINGERでもお馴染みのヒット曲「Without You」を含む6thアルバム。 米国産らしからぬ湿度を含んだポップソングがずらりと並んでいます。 「Driving Along」では、プロデューサーのRichard PerryとNilsson自ら演奏するMellotronが効果的に使用されています。音源はアコーディオンとブラスでしょうか、となるとMellotron MARK IIを使用したのかもしれません。 「The Moonbeam Song」では、アコースティックギターと共に、月光に揺れるMellotronフルートが使用され、夢見心地のままエンディングまで導いてくれます。

2003年8月8日
スティーヴ・ミラー・バンド
「THE STEVE MILLER BAND/Children Of The Future」(1968年 USA)

 サイケデリック風味のブルースロックを聴かせる、STEVE MILLER BANDの1stアルバム。 曲間が曖昧な組曲構成の中「In My First Mind」では、Jim Petermanのオルガンと共に溢れんばかりのMellotronストリングスを堪能することが出来ます。 Mellotronの妖気に包まれ、しっとりとした作風はブリティッシュテイストを感じさせる名演。 メンバーには若き日のBoz Scaggsも在籍しています。

2003年8月8日
ヨーロッパ特急
「KRAFTWERK/Trans-Europe Express」(1976年 GERMANY)

 KRAFTWERKスタイルを確立した6作目、ジャーマンプログレ及びテクノポップの金字塔。 6トラックでレコーディングされたというミニマリズムの極致からは、リズムシーケンス、シンセサイザー、ヴォコーダー、そしてアルバムのメインとも言えるVAKO ORCHESTRONの音を確認することが出来ます。 アルバムオープニング「Europe Endless」からORCHESTRONコーラスを使用しており、そのコーラスに導かれてベースのシーケンスが始まります。 曲終盤はリズムに合わせてコーラスがリズムを刻み、不自然なこと極まりありません。 「Showroom Dummies」では、シンセシーケンスとヴォーカルに合いの手を入れる様に、延々とORCHESTRONコーラスが導入されています。 「Trans-Europe Express」「Metal On Metal」ではORCHESTRONストリングスが大活躍し、メインのフレーズから列車通過音のドップラー効果まで表現して、Mellotronとは微妙に違う人工的な音を披露しています。 「Franz Schubert」ではシンセシーケンスをバックに、左右2チャンネル使用して、それまでの列車旅行の疲れを癒すかのような、大変美しいORCHESTRONストリングスのアンサンブルを楽しむことが出来ます。 キークリック音といい、音のヨレ具合といい、憂いを帯びた音色といい、Mellotronに近い特徴を持ちながら、また独特のたまらない魅力を発散しています。 アルバム発表当時は冷徹なイメージのみの印象でしたが、現在の耳では、手弾きによるフレーズの微妙な変化や、アナログ機材の発する音に、ほのかな人間味さえ感じてしまいます。 Ralf HutterかFlorian Schneiderが演奏しているのでしょうか、OPTIGANのプロユースモデルたるORCHESTRONの中でも、コンパクトなA型もしくはB型を使用していたようです。

2003年7月26日
加藤和彦 関連
「サディスティック・ミカ・バンド/黒船」(1974年 JAPAN/画像左)

 BEATLESホワイトアルバムのエンジニアで、Mellotronも演奏しているChris Thomasがプロデュースした、彼らの2ndアルバム。 黒船来航をモチーフにした日本的エキゾチズムと、ギラギラしたグラムテイストのミクスチャーが新鮮な作品になっています。 キーボードの今井裕さんは、「黒船 嘉永六年月二日」でMellotronストリングス、「四面楚歌」では大変美しいMellotronフルートのソロを演奏しています。

「加藤和彦/Belle Excentrique」(1981年 JAPAN/画像右)

 フランスでの録音を行った本作は、疑似フレンチデカダンを味わえるマニアック且つオシャレな作品になっています。 参加メンバーはYMO、松武秀樹、矢野顕子らを中心としており、キーボードの坂本龍一さんはProphet5、ピアノを併用しながらもChamberlinをメインキーボードに据えると言う恐ろしいセッティングになっています。 アルバム1曲目「Scandale De Mme Rothchile」から、生のストリングスに組み合わせてChamberlinストリングスを大胆に導入し、饒舌なChamberlinフルートのソロまで披露します。 その他「Gigi,La Danseuse」「Masque Rose De Mme M」「Je Connaissais Jean Cocteau」でChamberlinストリングス、ブラス、フルートが全面的に使用されており、その美しく丁寧な演奏には驚かされます。 「Bar Americain」では、加えてChamberlinオルガン、ヴィブラフォンの音源も使用されているかもしれません。 ピッチベンディングや速弾きなどの演奏技術、音色選択のセンス共に申し分なく、Chamberlinファンは一聴に値するアルバムだと思います。

2003年7月20日
決してひとりでは見ないでください
「GOBLIN/Suspiria」(1977年 ITALY)

 恐怖映画サントラの第一人者として、幅広いジャンルのファンから再評価されているキーボーディストClaudio Simonettiを擁するGoblin。 オリジナルアルバム「Roller」で見せた高度なジャズロックのテクニックは、本作でも強烈な存在感を放っており、優れた内容のアルバムになっています。 メインテーマである「Suspiria」では、MellotronストリングスとMellotronチャーチオルガンを導入、「Witch」では、低音から高音まで多用したMellotronクワイアの地獄絵巻。 「Markos」では、ピッチベンドさせたMellotronストリングスを左右へパンさせて、なんとも異様な雰囲気を醸し出しています。

2003年7月16日
ウェットン マンザネラ
「Phil Manzanera/Diamond Head」(1975年 UK/画像左)

 多数のゲストを迎えて制作された、1stソロアルバム。 収録曲「Same Time Next Week」では、John Wettonが変拍子の怪しい曲にのせて、ヴォーカル、ベース、Mellotronストリングスと活躍しています。 アルバムは、Robert Wyattがスペイン語でヴォーカルをとるナンバーに始まり、Manzaneraの明るいラテン趣味と、ENOによるマニアックな作り込みが同居するバラエティに富んだ聴き応えのある内容になっています。

「John Wetton/Caught in the Crossfire」(1980年 UK/画像右)

 ASIA前夜、次の一手を模索するJohn Wettonが、プログレポップの手法を見つけてしまった禁断のアルバム。 BAD COMPANYのSimon Kirkeや、仲良しPhil Manzaneraらがゲストに招かれています。 「Cold Is The Night」では中盤からJohn Wetton自身が演奏するMellotronフルートがバックを流し、終盤からMellotronクワイアとストリングスが全面に登場しドラマチックな展開になります。

2003年7月16日
SOUND TRACKのMellotron
「O.S.T./Godzilla」(1998年 USA/画像左)

 日本人のゴジラ観を完全無視した、ハリウッド版GODZILLA。 サントラ1曲目はBob Dylanの息子、Jakob Dylan率いるTHE WALLFROWERS 「Heroes」(David Bowieのカバー)です。 キーボードのRami JaffeeはOPTIGANストリングスを導入しています。 Ramiは多くのレコーディングセッションで、自前のMellotron、Chamberlin、OPTIGANを演奏しているようで、要注意人物の一人です。 FOO FIGHTERS「A320」では、Benmont Tenchの演奏する大変美しいChamberlinストリングスがイントロから導入されており、中盤からChamberlinの猛吹雪、そしてそのまま怒濤のエンディングとなります。 SIVERCHAIR「Untitled」では、隠し味にMellotronフルートが使用されています。 もしかしたら他の楽曲でもMellotronが使用されているかもしれません。

「O.S.T./I Still Know What You Did Last Summer」(1998年 USA/画像右)

 大ヒットを記録した青春ホラー映画の続編。 仲間がどんどん死んで行くのに、意外に平然としている主人公の設定の方がよっぽど恐いです・・・涙 Bijou Phillips「Polite」では冒頭から不穏なMellotronフルートが使用され、中盤からMellotronストリングスもかぶってきます。 この曲のプロデュースはTALKING HEADSのJerry Harrisonで、音色の選択にも関与しているかもしれません。 Grant Lee Buffalo「Testimony」では、中盤からMellotronフルートのアンサンブルを聴くことが出来ます。
(*Mellotronはサンプラーもしくはラック音源と思われます。)

2003年7月14日
パヴロフの犬
「PAVLOV'S DOG/Pamperd Menial」(1975年 USA/画像左)

 比較するものが見当たらない個性を持った、David Surkampのヴォーカルが牽引するアメリカンロックバンドの1st。 ポップロックとしての曲の完成度はどれも安定しており、全曲ごく当たり前の様にMellotronストリングス、フルートが使用されています。 ラスト2曲のドラマチックな流れを始め、感傷的なムードで盛り上げる構成はお家芸と言えるかもしれません。

「PAVLOV'S DOG/At Sound Of the Bell」(1976年 USA/画像右)

 Mellotronクワイアの神聖なバッキングでDavid Surkampが歌いはじめるアルバムオープニング「She Came Shining」は、1回聴いたら忘れられない印象的なものです。 大幅な導入にもかかわらず、やや一本調子だった前作のMellotron演奏に比べ、収録曲「Valkerie」で聴かれるMellotronフルートには飛び道具的な要素も垣間見られます。 Bill BrufordやAndy Mackayらをゲストに迎え、前作よりもバラエティに富んだアルバムになっています。 MellotronのクレジットはどちらもDougras Rayburn。

2003年7月10日
サンドローズ
「SANDROSE/Sandrose」(1972年 FRANCE)

 Jean Pierre Alarcenの歯切れの良いギターと、Henri Garellaのオルガン、Mellotronが印象的なフレンチプログレ人気盤。 アバンギャルドな音片で構成されるアルバムラスト1曲を除いて、7曲中、6曲にMellotronストリングス、フルート、チェロが大幅に導入されており、大変良い音でMellotronを堪能出来ます。 発声が不安定なRose Podwojny嬢のヴォーカルパートが無いインストナンバー「Underground Session(Chorea)」が、唯一安心して聴けるのは私だけでしょうか?

2003年7月10日
冬ざれた街
「五輪真弓/冬ざれた街-五輪真弓ライブ」(1974年 JAPAN)

 Carole Kingや細野晴臣らのティン・パン・アレイが参加した、2枚のスタジオアルバムを経た3rdライヴアルバム。 当時のアメリカンポップを自然に取り込み、良い意味でバタ臭い楽曲は、「恋人よ」の歌謡曲ヒットしか知らない私にとって新鮮で、再評価の必要ありと感心した高水準の内容です。 当時の流行りだったのでしょう、米ヒット曲のカバーを取り込んだセットリストには、「Killing Me Softly With His Song(やさしく歌って)」等も含まれており、バックバンドのキーボードを務める深町純さんが、Fender Rhodesと共にチリチリとイイ音でMellotronストリングスを演奏しています。

2003年7月4日
Mellotronが流れる J-POP
「野田幹子/Winter Couples」(1990年 JAPAN/画像左)

 現在は音楽活動と共に、ワインバーでソムリエをされているという野田さんの6thアルバム。 全曲BEACH BOYSのカバーで、しかも日本語歌詞のクリスマスアルバムとなっています。 「God Only Knows」では、Melotoron:King Beachsonというクレジットで、Mellotronストリングスがつつましやかにバックを流しています。
(*Mellotronはサンプラーもしくはラック音源と思われます。)

「GARNET CROW/夢みたあとで」(2002年 JAPAN/画像右)

 人気テレビアニメ「名探偵コナン」のエンディングテーマだった、彼らの10thシングル。 アレンジとキーボードを担当する、古井弘人さんはDavid Fosterをフェイヴァリットアーティストの一人にあげており、終盤に向かって劇的に盛り上がるアレンジはそれらしいムードがいっぱい。 曲中、Mellotronストリングス(Roland音源か?)が、顔を出したりして、好き者ごころをくすぐります。 イントロでもかすかにMellotronフルートの低音部が使われているかもしれません。 作詞も担当する、Azuki七(あずきなな)さんにも、キーボードのクレジットがあります。
(*Mellotronはサンプラーもしくはラック音源と思われます。)

2003年7月3日
ピンダートロン
「THE MOODY BLUES/Caught Live+5」(1977年 UK)

  1969年のロイヤルアルバートホール公演をLP3面に収録し、4面にはスタジオアウトテイクを収めた変則ライヴアルバム。 当然ライヴテイク全曲にMike PinderのMellotron MARK IIが主要楽器として導入されており、Mellotronの限界に近いのではないかと思わせるテクニカルな演奏を聴かせています。 ラフな演奏も散見できますが、各曲ボリュームペダルを慎重に操作し、スムーズな音の立ち上がりを意識したり、「The Dream」「Legend Of A Mind」では、ピッチベンドを多用するなど、大変緻密な演奏をしています。 リード音の切り替えが早いことや、「Dr.Livingstone,I Presume」等における、ストリングスとブラスの同時使用を聴くと、彼のMellotron MARK IIはリズム音源を廃し、左右の鍵盤にリード楽器のテープをセッティングしている事がよく理解出来ます。 加えて、同曲をはじめとするめまぐるしい曲展開に必死に追随するMikeの演奏は、Mellotronの多様性と限界を示す貴重な資料と言えると思います。 これは、Mellotron MARK IIの生演奏を知ることの出来る最重要アルバムです。

2003年6月30日
枯れたブルースフィーリング
「FREE/Highway」(1970年 UK)

 前作のヒットアルバム「Fire and Water」から、わずか半年のインターバルで発表された4作目のこのアルバムは、タイトルからは想像もつかない枯れたブルースロックアルバムになっています。 「Be My Friend」「Love You So」「Soon I Will Be Gone」では、ヨレて味わい深いMellotronストリングスが曲のイメージを決定付ける活躍をしています。 アルバムオープニングの「The Highway Song」では、サビ以降のベースラインを補強するかの様にMellotronチェロが加えられている様子で、音源テープがヘッドに当たるMellotron特有のクリック音が確認出来ます。 その耳で聴くとアコーディオンがリードをとる「On My Way」での音源は、Mellotronアコーディオンかもしれません。 2度目のフレーズ以降、なんとも不自然なクリック音が確認出来ます。 予想外にMellotronを多用するのはベーシストAndy Fraserのようで、音源、音質から察するにMellotron MARK IIを使用していると思われます。

2003年月26日
Eno Jobson
「ROXY MUSIC/Roxy Music」(1972年 UK)

 プログレッシヴロックともグラムロックともカテゴライズできない、独自の世界を築いた彼らの1stアルバム。 Synthesiser&TapesとクレジットされるENOがMellotronを演奏しているのでしょう、「Ladytron」では虚空をさまようMellotronストリングスに始まり、中間部ではMellotronブラスの速いフレーズ、そしてサックスソロ以降から大々的なMellotronストリングスでエンディングを迎えます。 「If There Is Something」では、いくつもの展開を迎えた曲の終盤、大変美しいMellotronストリングスでエンディングとなります。

「CURVED AIR/Air Cut」(1973年 UK)

 3人もの大幅なメンバーチェンジを余儀なくされた、新生CURVED AIRの作品。 作曲から演奏まで、多くの面で貢献してきたDarryl Wayらの穴を埋めるべく、エレクトリックバイオリンとキーボードをこなす、若きEddie Jobsonが加入して、しっかり仕事をこなしています。 収録曲「Metamorphosis」「World」「Armin」「U.H.F.」で、積極的にMellotronストリングスを導入するJobsonですが、やはり自ら作曲した長尺曲「Metamorphosis」は、最もプログレ的評価の出来る作品で、アルバムのハイライトと言える力作です。 Sonja Kristinaの強気なボーカルに、Jobsonの甘美なキーボードプレイがマッチしています。

「ROXY MUSIC/Greatest Hits」(1977年 UK)

 1stアルバムに収録されなかったシングル「Virginia Palain」(1972年)では、ENOの演奏するMellotronストリングスを聴くことが出来ます。 他の楽器の音を再生すると言う、ある意味泥棒的なMellotronの出自を意識したのかわかりませんが、音の出るただのスイッチとしていかがわしくワンコードのみを演奏しています。

 CURVED AIRから今度はENOの穴を埋めるべく、大スターROXY MUSICに引き抜かれたEddie Jobsonは、1973年のアルバム「Stranded」収録の「Street Life」で、ザラザラした独特のMellotronブラスを導入、また1975年のアルバム「Siren」収録の「Love Is The Drug」でも、チープなコンボオルガンやエレピに紛れて、Mellotronブラスでサビの華やかさを演出しています。

2003年6月21日
フィンチ
「FINCH/Glory Of The Inner Force」(1975年 NETHERLANDS)

 1975年〜77年までアルバム3作品を残した彼らのデビューアルバム。 ポップス、シンフォニックロック、ジャズロック等の語法と、メンバー(ギター、ベース、キーボード、ドラムス)の力量をすべて出し尽くすかと思わせる覇気ある好演をしています。 メロディや曲展開の要素が非常に多いのですが、ギクシャクした印象はなく、アルバム全体の整合感がとれている上、曲調も上昇指向で明るく、一気にアルバムを聴くことが出来ます。 Cleem Determeijerの演奏するMellotronストリングスも軽快で、アルバム全曲に使用されています。 ジャケット裏にはメンバーのジョークで「Lyrics Sheet Inside」とありますが、全曲楽器が歌うインストルメンタルです。

2003年6月20日
ビリー・ジョエル
「BILLY JOEL/The Stranger」(1977年 USA)

 1978年のグラミー賞を受賞した、Billyの大出世作。 それまでの孤独なピアノマンから、バンド指向へ移行する作品で、全体的に骨太な印象です。 「She's Always A Woman」では、Billy自ら演奏するなんとも寂しげなMellotronフルートが、静かな曲にマッチしています。 アルバムの舞台であるニューヨークのすきま風か、それとも都会人の心のすきま風か、このMellotronフルート特に印象的に響きます。

2003年6月20日
Kのサーカス
「CIRKUS/One」(1971年 UK)

 もともと自主製作盤でリリースされ、当時は陽の目を見なかった不遇の名盤。 メロディアスでポップな曲に、甘いストリングスが魅力のこのアルバムでは、Mellotronのウイークポイントを出さないような巧みなアレンジがされています。 速いプレイや微妙な表現は、本物のストリングスを使用し、おおらかで印象的な部分には惜し気も無くMellotronを登場させています。 収録9曲中、Mellotronを使用しているのは「Seasons」「Song For Tavish」「Brotherly Love」の3曲だけですが、アルバム全体にMellotronが鳴り響いているかのような印象です。 オルガンやギターも、軽はずみなフレーズが見当たらないセンスの良さで、発掘されるに値する価値ある1枚と再認識させられました。 MellotronはDerek G.Millerのクレジットになっています。

2003年6月20日
イシルドゥルスバーネ
「ISILDURS BANE/Isildurs Bane」(1984年 SWEDEN)

 1976年に結成し、活動を続けてきたものの、商業的理由によりレコード契約に恵まれず、1984年自主レーベルからリリースされた1stアルバム。 アルバム大半を占める28分もの「Sagan Om Den Irlandska Algen」(アナログA面とB面途中まで)は、シンセサイザー、ピアノ、HAMMONDオルガン、フルート、アコースティックギター、グロッケンシュピール、ヴィブラフォン等を導入した王道シンフォニックロックで、前面に出た清々しさだけでなく屈曲した複雑さも併せ持つ入念な作り込み。 各種シンセサイザーに混じり、然るべきところで、Mats Johanssonの演奏するMellotronクワイアも導入されています。 フレットレスベースも演奏するベーシストやドラマーの安定度も高く、1stアルバムながら出来映えは、高水準の作品です。

2003年6月18日
イタリアンポップス
「V.A./Itarian Pops All Stars」(1977年 ITALY/画像左)

 イタリア歌謡曲コンピレーションアルバム。 プログレファンにもなじみのある、I POOHからソロシンガーへ転向したRiccardo Fogli、I DIK DIK、EQUIPE 84、MATIA BAZARらも顔を並べています。 I DIK DIKは、Rod StewartがSutherland Brothersの曲をカバーしてヒットさせた「Voland」(Sailing)を、1976年の同名アルバムより収録。 聴きなれたメロディの中盤からMellotronストリングスが導入され、終盤はMellotronクワイアも重なり、スケールの大きい曲調を盛り上げています。 1970年代前半のプログレ全盛期には、イタリアのポップバンドもこぞってプログレッシヴなアプローチをしていましたが、この曲は元HUNKA MUNKAのキーボーディスト、Robert Calrotの影響もあるようです。

(画像右/ジャケット裏のI DIK DIKメンバーフォト)

2003年6月18日
使ってるの?
「DEEP PURPLE/Burn」(1974年 UK/画像左)

 新加入のDavid CoverdaleとGlenn Hughesが、それまでのテンションを落とさず結果を出した名盤。 日本盤ライナーで、収録曲「“A”200」の解説にはこうあります。
「これまた、Jon Lord好みのナンバーで、Mellotronをおもしろく使って、中央アジア高原風、幻想的なムードでいっぱい。」 実際の曲はシンセサイザーの多重録音による「MARS」風、実験作なのですが、バックにサイレンの様に鳴っているMellotronストリングスらしき音が確認出来ます。 おそらく、ピッチベンドで効果的に演奏したものだとは思いますが、74年当時にこの音がMellotronと認識出来た人がいたでしょうか? ライナーのコメントは、シンセの使用をMellotronと書き違えたのではないかと思います。

「Vangelis/Heaven And Hell」(1975年 GREECE/画像中)

YESのJon Andersonがゲストボーカルで参加している、Vangelisのソロデビューアルバム。 日本盤帯、およびライナーには「Mellotronを使用」と謳われていますが、幾重にも重ねられた鍵盤パートの中に、それらしい音は見つけられません。 また、脅迫的に迫ってくるクワイアはEnglish Chamber Choirですので、Mellotronクワイアでは無さそう。 ライナーにある、鍵盤に囲まれた彼の写真にもMellotronはありません。 しかし、内容はMellotron使用の有無など忘れる素晴らしいものです。

「REFRIGERATOR/Glitter Jazz」(1999年 USA/画像右)

 ジャケ買い。 ジャケットには、アヒルのランプに照らされるOPTIGANの姿があります。 内容は凡庸なロックで、数曲にオルガンの音があるのですが、まさかこれがOPTIGANの音とは思えません。

2003年6月18日
フライト
「Flyte/Dawn Dancer」(1979年 NETHERLANDS/BELGIUM)

 Flyte唯一のアルバムである本作は、1曲目「Woman」からLeo Cornelissensの演奏する派手なMellotronストリングスで幕を開けます。 「Grace」でもMellotronストリングスを使用、前述の「Woman」も含めて、泣きのギターフレーズに絡めたMellotronがドリーミーなシンフォニックロックを演出しています。 「Brain Damage」はRhodesと共にMellotronストリングスが活躍するフュージョンテイスト、「You're Breath Enjoyer」ではスリリングなピアノにMellotronクワイアが絡むジャズロックテイスト、「King of Cloud」では荘厳なMellotronストリングスにクワイアを重ねたシアトリカルなイメージ。 曲調のバラエティもさることながら、1979年という微妙な時期も影響して、Rhodesや、リードシンセのモダンな音色とMellotronが大きく遊離している事もアルバムをやや散漫な印象にしているのかもしれません。 しかし、個々の楽曲は魅力的な部分も多く、捨てがたい魅力を持っています。

2003年6月14日
ブラックサバス
「BLACK SABBATH/Vol.4」(1972年 UK)

 UKハードロックの中心的バンド、4作目。 緩急バランスのとれたアルバムの3曲目「Changes」は、Mellotronストリングスをメインに使用し、吸い込まれそうなくらい魅力的なバラードに仕上げています。 また「Snowblind」の終盤、ギターソロの導入部に特徴的なMellotronストリングスのフレーズが演奏されています。 MellotronはTony Iommiが演奏しているのでしょうか、クレジットはされていません。 呪術的なイメージよりも、Tony Iommiのヘヴィなギターリフよりも、Ozzy Osbourneの音程の外れたボーカルがなんと個性的なことか!

2003年6月14日
スリードッグナイト
「THREE DOG NIGHT/Hard Labor」(1974年 USA)

 1968年の結成から、10枚のアルバムがゴールド・ディスクを受賞するヒットメイカーである彼等が、シングル中心の活動から、新たなプロデューサーを迎えてアルバムアーティストとして臨んだ初のコンセプトアルバム。 新加入のキーボーディスト、Skip Conteがアルバムオープニング「Prelude」から縦横無尽にChamberlinを弾きまくります。 「Sure As I'm Sittin Here」ではChamberlinブラスの低音がアクセント効かせ、「Sitting In Limbo」では、味のあるChamberlinフルートを使用しています。 外部ソングライターの作品を歌ってきた彼等には珍しい、キーボードSkip Conteの作品「I'd Be So Happy」では、スケールの大きい楽曲にChamberlinストリングス、フルートが嵐のように使用されていて、このアルバムのハイライトになっています。 「Play Something Sweet (Brickyard Blues)」では、Chamberlinブラス(ARPか?)、「On The Way Back Home」では、Chamberlinフルートの特徴的なリードプレイが楽しめます。 アルバム最後の「The Show Must Go On」は、オープニングの「Prelude」と対になる曲で、こちらもChamberlinブラス、フルート、ストリングスのアンサンブルが楽しめる構成になっています。 曲もポップで完成度が高く、アルバム全体の流れも考慮された構成は、BEATLES「SGT.PEPPER'S・・・」を想起させるものです。 「I'd Be So Happy」からのアルバム後半部のChamberlinプレイは、その筋の方なら必ず納得するであろう、一聴に値する名演だと思います。

2003年6月14日
ジェファーソンスターシップ
「JEFFERSON STARSHIP/Dragon Fly」(1974年 USA)

 分裂状態にあったJEFFERSON AIRPLANEから、Grace SlickとPaul Kantnerが中心となってJEFFERSON STARSHIPと改名しての1作目。 アルバム1曲目「Ride The Tiger」冒頭から、元QUICKSILVER MESSENGER SERVICEのDavid Freibergが演奏するMellotronストリングスがバックを埋め尽くします。「Be Young You」では、Papa John CreachのバイオリンとMellotronストリングスの絶妙な絡みが聴きどころです。 「Caroline」「Hyperdrive」でもMellotronストリングスがバックを流し、Mellotronストリングスのサステインでエンディングになる、予想以上の使用頻度です。 7人のメンバーそれぞれがヴォーカル、コーラス、ギター、バイオリン、キーボード、ベースと前面に出ようとせめぎあいながら、なんとも絶妙なバランスと切れ味の良さで、味のある作品に仕上がっています。

2003年6月7日
サンタナ
「SANTANA/Welcome」(1973年 USA)

 名作「Caravanserai」を経て、Mahavishnu OrchestraのJohn McLaughlin等を含む新バンドでの1作目、通算5作目のアルバム。 ラテンフレーバー溢れるジャズフュージョンアルバムのオープニング「Going Home」には、あまりにも神聖なムード漂うRichard Cermodeの演奏するMellotronストリングスが流れます。 独特のコード進行は、無限に上昇して行くような高揚感を味あわせてくれます。

2003年6月7日
ヴァネッサ・パラディ
「VANESSA PARADIS/Vanessa Paradis」(1992年 FRANCE)

 14才で歌手デビューし、欧州市場からこの3rdアルバムをもってアメリカ進出を試みた、20才の出世作。 プロデュースはLenny Kravitzが担当しており、バックトラックはとてもアイドルのアルバムとは思えないロック色があふれています。 楽器の選択から楽曲、演奏、録音状態まで、強烈に彼の統制下にあるようです。 「Silver And Gold」では、Lennyの演奏する口笛のようなMellotronフルートが楽曲のカラーを決定しており、エンディングはピッチベンドしながら息絶える演出。 「Lonley Rainbow」では楽器のクレジットは無いものの、冒頭から全編にわたってMellotronフルートの低音が囁きかけてきます。 かわいい顔した裏・Lenny Klavitzアルバム。

2003年6月3日
ペドロ&カプリシャス
「ペドロ&カプリシャス/華麗なるニュー・ポップスの世界」(1973年 JAPAN)

 「五番街のマリーへ」「ジョニィへの伝言」等のヒット曲と、ポップスのカバーを収録したベストアルバム。 CARPENTERSの「Yesterday Once More」では、サビ以降Mellotronストリングスがバックを流します。 Roberta Flackの「Killing Me Softly With His Song」では、前半静かにMellotronストリングスが重なり、後半次第に大音量になるミキシングで、盛大にエンディングを迎えます。 昨今、J-POPで使用されているサンプリングMellotronに慣らされている耳には、あまりに荒々しい本物の感触を再認識。 音から察するに、Mellotron MARK IIに聴こえるのですが、レコーディングの詳細は不明です。

2003年6月2日
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